目の検診の重要性

 

視力検査

 

眼科検査器械

 

眼科の上手なかかり方

 

目薬のさし方

 

まぶたのけいれん

 

ぶどう膜炎

 

雪目


目の検診の重要性

目の検診の重要性<やさしい眼科通信20114月号第1回から>

 

眼科検診はなぜ大切なのでしょうか?

「目の検診を受けましょう」と聞いたことはあると思いますが、自覚症状がないとなかなか眼科を受診することはありませんよね。

 眼科の病気にはいろいろありますが意外と自覚症状がなかったり、目は2つあるために片方の目に病気があっても、自覚されにくいことがあり、眼科検診によって病気が見つかることも多いのです。転ばぬ先のつえとして、眼科検診を受けることをお勧めしています。

 

ものを見る仕組み

 目の働きや構造はよくカメラに例えられます。

 人の目を見た時に、黒目として認識される部分の表面には、角膜という透明な膜があります。角膜の後ろに透けて見えるいわゆる茶目は虹彩と呼ばれ、目の中に入ってくる光の量を調節する働きがあり、カメラの絞りに当たります。この虹彩の後ろに水晶体という透明な部分があります。水晶体はカメラのレンズと同じで、私たちが見ようとするものを正しく、網膜に焦点を結ばせる働きがあります。網膜に映った像が視神経を通して脳に伝えられ、私たちは初めてものを見ることができます。

 

眼科検診

 眼科検診でよく知られているものとして、3歳児検診、学校検診、人間ドックでの眼底検診があげられます。

 3歳児検診では、斜視も見つかることはありますが、見た目から親が先に気がつくことが多いものです。3歳児検診で見つけることができる病気に弱視があります。特に片眼の弱視(不同視弱視)は、他方の目の視力は良好ですので、見えにくそうにしているというそぶりがないため、3歳児検診で視力の項目が取り入れられる以前は、就学時検診で初めて見つかって治療がうまくいかないこともありました。

 学校検診では、子どもの視力低下を早期に見つけることができます。急に視力が落ちるわけではないので、視力が0.3を切っていても、案外、子どもは不自由ないと答えるものです。でも0.3を切っていると黒板の字は見えにくいはずですので、眼鏡も考えてもらいたいと思います。

 人間ドックでの眼底検診では、以前は高血圧の変化、動脈硬化の変化を見ることが目的でした。最近では、日本人には緑内障の患者が多いことが判明し、眼科医が判定する人間ドックの眼底写真の視神経の変化から見つかることが増えています。緑内障は進行するまで自覚症状の出ない病気で、逆に自覚症状が出た時には、かなり進行していることが多い病気です。

 

眼科で行われる検査

 眼科では、視力検査、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査を行います。

 視力検査は、裸眼視力(そのままの状態でどれくらい見えるか)、眼鏡視力(ご自分の眼鏡でどれくらい見えているか)、矯正視力(一番ピントがあった眼鏡をかけた状態でどこまで見えるか)の検査を行います。

 眼圧検査は、目の硬さを測るものです。緑内障は40歳以上の17人に1人くらいの割合で発症することが明らかになりましたが、自覚症状が少ないために、その内の8090%の方は眼科を受診していないといわれています。

 細隙灯顕微鏡検査は、診察室で行われる検査で、目の表面から目の奥まで直接観察し、必要によって色素やレンズを使って、目に病気がないかを詳しく調べる検査です。

 眼底検査は人間ドックの眼底検査より詳しく見るために、目薬を入れて瞳を広げて検査する方法があります。この目薬の検査を受ける場合は、4.5時間まぶしくなりますので、すぐには車の運転は避けてもらいたいと思います。もちろん後日改めて検査を受けることもできますので、相談してほしいと思います。

 眼科で行われる検査は、どの検査も痛みを伴う検査ではありません。少しまぶしいと感じることはあるかとは思いますが、基本的には怖い検査ではありませんので、おっくうがらずにぜひ、眼科検診を受けることをお勧めします。


視力検査

視力検査<やさしい眼科通信20115月号第2回から>  

 

眼科で視力検査を受けましょう

 眼科と聞いて最初に思い浮かぶものと言ったら何でしょうか。視力検査のCのようなマークを思い出す方が多いのではないでしょうか。眼科で担当する病気は、目の外側の瞼や目の表面の白目である結膜から、目の中の神経の膜である網膜、さらに眼球の後ろの視神経から脳まで、広い範囲に及びます。眼科の病気には意外と自覚症状がなかったり、片方の目に病気があっても自覚されにくいことがあり、受診することで病気が見つかることも多いのです。

 今回は眼科の基本検査ですが、一番重要と考えられる視力検査についてお話します。

 

目の構造と働き

 目の働きや構造はよくカメラに例えられます。今のところは、「目の奥にもカメラと同じようにフィルムがあって、そこに像を結びます」というふうなお話でご理解いただけていますが、デジタルカメラが当たり前の時代になってきていますから、その説明の方法も考え直さなければならない時が来るのかもしれません。

 人の目を見た時に、黒目の表面に角膜という透明な膜があります。角膜の後ろに透けて見えるいわゆる茶目は虹彩と呼ばれ、目の中に入ってくる光の量を調節する働きがありま、明るい所、暗い所では虹彩が動き、瞳の大きさを変えるので、カメラの絞りに当たります。虹彩の後ろの水晶体はカメラのレンズと同じで、私たちが見ようとするものを正しく、網膜に焦点を結ばせる働きがあります。カメラではレンズが前後に動きますが、水晶体はその厚みを変えることによってピントを合わせてくれています。網膜に映った像が視神経を通して脳に伝えられ、私たちは初めてものを見ることができます。

 目の奥には網膜と呼ばれる神経の膜があります。カメラのフィルムに当たりますが、フィルムと違って網膜は場所によって感度が違っています。網膜の一番底の真ん中にあたる黄斑という場所が、一番感度が高くなっています。

 

視力検査の C について

 視力検査で使われているアルファベットのCのようなマーク。このマークは『ランドルト環』という名前がついています。ランドルトは、19世紀後半から20世紀初頭のフランスの眼科医の名前です。Cの輪の切れ目の方向を答えてもらうことによって、視力を測定します。

 少し難しい話になりますが、視力は確認できる最小視角の逆数で表されます。算数で教わる角度の単位は、度までですが、1度の60分の1の角度を1分といいます。その1分の視角を確認できる能力を、視力1.0といいます。例えば、確認できる最小視角が2分なら、視力は1÷20.510分なら1÷100.1ということになります。

 通常の視力表の場合、視力検査は5メートル離れて行います。視力表で1.0に該当するランドルト環は、高さ7.5ミリ、文字の太さ1.5ミリ、文字の切れ目部分の幅1.5ミリです。この文字の切れ目部分の幅1.5ミリが、5メートル離れたところからの視角1分に相当します。ちなみに、視力0.5のランドルト環の大きさは1.0の2倍、0.25倍、0.110倍の大きさです。

 視力検査で一番上のランドルト環の向きがわからない時は、視力表に近づいて測定することになります。もし4メートルまで近寄って0.1のランドルト環の向きがわかれば視力は0.083メートルでわかれば0.06ということになります。

 

♪視力が良いとか悪いとか 人は時々口にするけど

 よく「私は目が悪いから」とか「俺は目は良いんだ」という話がありますが、一般に目が良い悪いは、裸眼視力の良し悪しで判断されているようです。

 眼科での視力検査は、裸眼視力、眼鏡視力、矯正視力の検査を行います。さらに中年以降の方では、近くを見る力を調べる近方視力検査を行うことがあります。

 眼科医の考える視力の良し悪しは、一番ピントがあった眼鏡をかけた状態でどこまで見えるかを調べた結果の矯正視力で判断することになります。裸眼視力は、その数値が低くても医学的な異常ではないこともありますが、矯正視力が0.9以下の場合は、病気が隠されていないかどうか、さらに詳しい検査が必要になってきます。視力はあくまでも、どれくらいの近さの二つの点が離れているかを判断する能力をみるものですから、例えば像の暗さ、歪みなどの見え方の質までを評価しているわけではありません。しかし、視力検査は眼科検査の基本になるものであり、一番重要な検査だといえます。

 視力は、見えるか見えないかを答えてもらうことによって検査します。その日の体調などによっても変動することがあります。裸眼視力の数字だけに一喜一憂するのではなく、眼科で矯正視力と屈折状態を正確に調べる検査を受けることをお勧めしています。


眼科検査器械

眼科検査器械 <やさしい眼科通信20116月号第3回から>  

 

精密検査を受けましょう

 眼科診療の特色って何でしょうか。皆さんの考える特色と、私の考える特色に違いがあるかもしれませんが。私の考える特色は、検査が多い、診察室が暗くなる、診察がまぶしい、ということでしょうか。

 眼科に診察を受けに行くと、診察の前に視力、屈折、眼圧などの検査があり、時間を要してしまうという印象があると思います。もちろん、「はやり目」のような感染性疾患が疑われる時は、検査をせずにすぐに診察する場合もあります。そこで今回は数多い眼科検査器械についてお話しします。

 

眼科の検査器械あれこれ

1)オートレフラクト・ケラトメータ

 オートレフラクトメータは近視、遠視、乱視などの目の度数を測ります。のぞくと牧場の家や気球などの指標が見えますので、ぼんやりとその指標を見ていていただきます。

 オートケラトメータは角膜(黒目の表面の膜)のカーブを測ります。乱視の主な原因は角膜のカーブのゆがみです。コンタクトレンズ処方の際には必ずこの機械で検査し、白内障手術の術前検査として、目の中に入れる眼内レンズの度数を決定する際にも使います。

 これらの検査は痛くもまぶしくもないのでご安心ください。

2)ノンコンタクト・トノメータ

 これは眼圧といって、目の硬さを測ります。目の表面にピュッという空気が当たります。初めての時は、少しビックリされることがありますが、決して痛い検査ではありませんので、ご安心ください。患者さんの中には 「空気銃で撃たれる検査は怖いから、受けたくない」と言われる方もいますが、最近の器械は以前のものより空気銃の威力が落ちていると思います。確かに空気が「いつ出るか、いつ出るか」と思うと嫌な気分になることは分かります。眼圧を測って、緑内障がないか調べます。緑内障は、自覚症状がなく、視野がかなり狭くなるまで気付かない病気ですので、早期発見が重要になります。

3)角膜内皮細胞検査

 コンタクトレンズ希望の方、目の手術を受ける(受けた)方には、角膜内皮細胞検査を行います。角膜内皮細胞は、角膜の透明性を保つために重要な働きをしています。加齢と共にともに減少することは避けられませんが、コンタクトレンズの誤った使用や、目の手術によっても減少し、減少した細胞は再生しません。コンタクトレンズで細胞を減らさないように、正しいフィッティングのレンズで、かつ酸素透過性の優れたレンズを正しい使用法で装用しなければなりません。また白内障手術で角膜内皮細胞を減らさないように、目に優しい白内障手術を心がけています。

4)視野検査

 緑内障の診断と経過観察には、精密な視野検査が欠かせません。目の神経が傷害されて、見える範囲が知らないうちに狭くなってくる病気が緑内障です。40歳以上の方の17人に1人は緑内障と考えられています。クラス会をやったら、クラスに2人は緑内障の人がいる確率になります。視野検査は自覚検査なので、検査時間が長くなると、疲れて集中できず、検査結果があてにならなくなる心配があります。検査時間はを短く、しかし必要な部位の検査は確実に行う必要があります。最近の自動視野検査器械は短時間に緑内障の初期変化を見つけ出すことができるように設計されています。

5)眼底カメラ

 眼底カメラにはカラー写真を撮るものから蛍光写真を撮るものまであります。眼底を客観的に記録するだけでなく、診断的価値も高いものです。撮影部位や撮影倍率を変えることによって目的の部位を確実に撮影することが可能です。

6)超音波検査

 超音波の性質を利用して目の奥行きを測るAモードは、白内障手術時に挿入する眼内レンズの度数を決めるために使います。Bモードは眼底が見えないときに眼内の状況把握に有用な情報を与えてくれます。

7)光干渉断層計

 OCT と呼ばれ、今まで捉えることのできなかった眼底の断層像を撮影することができるようになりました。近年増加傾向にある加齢黄斑変性、黄斑円孔の診断、さらに緑内障の診断にも応用されるようになってきています。

8)網膜電位図

 光刺激に対する網膜の電気反応を記録する器械です。網膜の他覚的検査として、網膜のどの層に機能異常があるのかを推測できます。

9)ヘススクリーン

 自覚的な眼位ずれを記録する検査で、眼球の動きと複視の状態を検査することができます。

 

 眼科クリニックではいろいろな検査器械があり、これらから得られる客観的な結果と、患者さんの主観的な症状の話を聞き、目の表面と場合によっては目の奥までみて診断をつけ、治療します。検査器械から得られる結果は非常に重要ですし、信頼できる結果が得られるように、注意深く検査します。検査器械はどれも重量があり固定して使用していますので、皆さんに次々と椅子を移っていただく面倒をお掛けしますが、どうぞご容赦ください。


眼科の上手なかかり方

眼科の上手なかかり方<やさしい眼科通信20133月号第22回から>  

 

早期発見・早期治療のために

 2年間にわたり「やさしい眼科通信」をお届けしてきましたが、今回が最終回です。目の検診の重要性、眼科の検査のあれこれに始まり、眼科でよく診る病気について書いてきました。眼科に限らず、病気の対処に大切なことは「早期発見・早期治療」です。最終回は、眼科でどのようにすればスムーズな診察が受けられるのかについてお話します。

 

まずは問診票の記入を

多くの眼科では、初めての患者さんに「問診票」の記入をお願いすると思います。あらかじめ教えてもらえると、症状のおおよその見当や事前の検査が必要かどうかなどが分かり、準備がスムーズにできるので、余計な待ち時間を減らすことにつながります。分かる範囲でかまいませんので必ず記入をお願いします。

 目は左右2つあるので、どちらの目に症状があるのかを教えてください。この時に正しい情報が得られないと正しい診断ができるまでに時間がかかったり、本当は不必要な検査をすることになったりします。例えば「目がかすむ」という理由で受診された時は、先に視力検査・屈折検査・眼圧検査をした後に診察となります。「目やに」が多いという場合は、感染性の結膜炎の可能性があるため、視力検査は後日になります。

 

症状をメモして持参を

いつごろから症状があり、どう変ってきたのかを教えてください。いつからの症状かによって、より正確に診断を絞ることができます。治療に反応しやすいものかどうかの判断にもなります。家でメモを作って持参されると良いと思います。

 また、いろいろな症状がある場合、自分にとって最も重要と思う症状から順番に教えてください。例えば、過去に目の手術を受けている場合など、手術の影響が出てきている可能性もあるので正直に教えてください。他の眼科で治療を受けている場合も同様です。緑内障で眼圧を下げる目薬を使用して眼圧が正常なのと、何も治療せずに眼圧が正常なのでは、その意味合いが違ってきます。その場合、使っている目薬の名前が分かると助かります。

 

眼鏡の度数は合っている?

眼鏡が合っていないために疲れ目の症状が出ている場合や、遠近両用眼鏡を掛けたほうがよく見える場合など、眼鏡が不適合なために症状が出ていることもあります。度数と、その眼鏡を掛けた視力検査が必要です。コンタクトレンズは、使用方法によっては黒目に傷が付くこともあり、傷の有無なども検査します。

 

眼科以外の病気について

糖尿病や高血圧があると眼底出血を引き起こすことがありますが、かなり進行しないと自覚症状は出てきません。逆に見えにくいなどの自覚症状が出てきてからでは手遅れになってしまうこともあります。一見、目と関係ないと思われる病気でも、治療中の病気(もしくは指摘されたことのある病気)があれば教えてください。

 

検査は怖くありません

視力検査は重要な検査の一つですが、本人の自覚検査です。見ようと目を細めることなく、リラックスして答えてください。はっきり見えなくても、輪の開いている方向が何となくでも分かれば答えてください。他にも検査室には、いろいろな器械があり、検査を受けてもらいますが、痛きないので、安心して受けてください。

 やさしい眼科通信では、1回目から4回目までは眼科に馴染みをもってもらう目的で眼科診療についての説明をしました。5回目からは、赤ちゃんが最初にかかりやすい病気から始まり、年齢を重ねるにしたがって増える代表的な病気について順番に書いてきました。

 この通信は、目に何か気になることがあった時には、皆さんに眼科に気楽にかかってもらいたいという気持ちで書かせていただきました。長い間、私のつたない文にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

 

1)目の検診の重要性:234月号

2)視力検査(屈折検査):235月号

3)眼科検査器械:236月号

4)診察室の検査 スリット・眼底検査散瞳:237月号

5)赤ちゃんの目の病気:238月号

6)斜視:239月号

7)3歳児検診:2310月号

8)弱視:2311月号

9)眼科学校検診:241月号

10)近視・仮性近視:242月号

11)コンタクトレンズ:243月号

12)アレルギー性結膜炎:244月号

13)ウイルス性結膜炎:245月号

14)飛蚊症:246月号

15)ドライアイ:247月号

16)老眼:248月号

17)緑内障 :249月号

18)糖尿病網膜症:2410月号

19)白内障:2411月号

20)後発白内障:251月号

21)加齢黄斑変性症:252月号

22)眼科の上手なかかり方:253月号


目薬のさし方

目薬のさし方2004.4.1発行優しい眼科クリニック第5号から>  

 

目薬のさし方

今回は、眼科の治療の中で、最も頻繁に使用され、最も重要と考えられます「目薬のさし方」について、お話させていただこうと思います。

 

さし方

 さしかたをワープロで変換しましたら、刺し方、指し方、挿し方、差し方、射し方、注し方、鎖し方、点し方、色々出てきます。日本語って難しいですね。ついでに、どうやって使い分けるのかも調べてみました。

刺す:突き入れる「蚊に刺される、ランナーを刺す、鼻を刺す臭い」

指す:指で示す「西を指して進む、犯人を指す、将棋を指す」

挿す:中に入れる「花瓶に花を挿す」

差す:{一般的}「傘を差す、潮が差してくる、赤味が差す」

射す:{光が}⇒差す「西日が射(=差)す」

注す:注ぐ、加える⇒差す「水を注(=差)す、口紅を注(差)す」

鎖す:{戸・窓・錠を}⇒差す「門を鎖(=差)す」

点す:少し注ぐ⇒差・注す「目薬を点(=注・差)す」

という風に使い分けるとのことです。点眼というように、目薬は点すんですね。ところが、目薬で目を突いてしまって痛い思いをした刺したことのある人や、目薬の先が瞼に触れてしまっている挿し方をしている人や、怖くて瞼を鎖している人や、瞼からあふれるようにたくさんの目薬を注す人も・・・皆さんも心当たりあるのでは、ないでしょうか。確かに慣れるまで目薬点すのは難しいですよね。

 

目薬の正しい点し方

1. まずは、石鹸で手をきれいに洗いましょう。

2. 次に、目薬の先端に触らないようにして、キャップをはずしてください。

3. 点眼する前に、目薬の位置を固定します。この時、目薬の先端が目や睫毛に触れないように注意しましょう。

4. もう一方の手の人差し指で下瞼をひっぱって、ポケットを作ります。

5. 顔を上に向け、1回に1滴ずつ出るように、そっと目薬に圧力を加えます。

6. 点眼し終わったら、まばたきをせず1分位、目を閉じてください。さらに目頭の少し下を軽く押さえてください。

7. あふれた目薬は、ティッシュでふき取ってください。

8. 2種類以上の目薬を使用する場合には、間隔を5分以上あけて点眼してください。

9. 目薬を使い終わったら、その目薬の貯法に従って保管しましょう。(遮光袋に入れるもの、冷所保存など)

10. 他の人の使っている目薬を使うことは避けてください。

以上が目薬の正しい点し方です。難しいようですが、慣れると必ず上手にできるようになります。コツは、天井を見て、テンと1滴点すことです。

 

目薬 Q&A

診察の時に、時々尋ねられる目薬の疑問をQ&A方式でまとめてみました。

Q:目薬は1滴だけだと効かないような感じがするけど、何滴も点眼しては駄目でしょうか

A:瞼の中にためておける涙の量は30μlと言われています。一方目薬1滴は50μlです。目薬1滴だけで、瞼の中は限界を超えて、あふれてきます。それ以上、目薬をさしてもこぼれるだけで、お薬として働きません。また、目薬には用法がありますので、指示通りの回数の点眼をお願い致します。

 

Q:目薬には使用期限が書いてありますから、それまでは長持ちするんですよね。

A:使用期限は、開けていない場合の期限です。一度開封してしまいますと、1ヵ月くらいが目安です。ほとんどの目薬は15mlですから、100滴分です。上手に点眼できるとしますと、両眼に14回でおよそ10日分、両眼に12回でおよそ3週間分ということになります。開けてから1ヵ月経った目薬は処分するようにしてください。

 

Q:目薬を点した後、苦く感じることがあるけど、心配ないものでしょうか。

A:それは目薬が、涙の通り道を通って鼻から口へと流れてしまうためです。涙は目頭から鼻のほうに流れています。この流れにのって、目薬も口へと進みますが、この分の目薬は目に効いていないことになります。そこでまばたきをせずに目を閉じていることと、目頭を軽く押さえておくことによって、目薬が角膜から目の中に吸収される量が増え効果が高まります。

 

Q:寝る前に目薬を点さないほうが良いと聞いたことがありますが、本当ですか。

A:かなり昔のことになりますが、寝る前に点眼すると副作用が出やすい薬がありました。その頃には、寝る前には点さないほうが良いと言われていたと思いますが、現在使われているほとんどの目薬は、寝る前に使用しても問題はありません。


まぶたのけいれん

「まぶたのけいれん」<ライナー健康相談2004120日カルテ51から>

 

Q:時おり、下まぶたがぴくぴくとけいれんしてしまいます。最近では目が乾きやすくなったような気もするのですが、眼科で診てもらったほうがよいのでしょうか?

31歳・女。きょうこ)

 

この相談を、ライナースタッフがこんの優眼科クリニックの今野優院長にお聞きしました。

 

A:まぶたがぴくぴくとけいれんするとのことですが、目を閉じる筋肉である眼輪筋が収縮するもので、片側の下まぶたに起こることが多いようです。

 軽い眼瞼けいれんは、健康な人でもパソコンの長時間操作などがもたらす眼精疲労や、寝不足の際に一時的に感じられることがあります。さざなみ状のけいれんが、片方の眼のまぶたの一部に限局して起こる状態であれば、特に心配なく、治療を要しません。

 目の病気で眼瞼けいれんが生じることもあり、結膜炎や角膜炎、異物の侵入、ドライアイが主な原因として考えられます。目が乾きやすくなったような気がするとのことですので、ドライアイの検査を受けることをお勧めします。

 ドライアイとは、涙の量が減ったり、涙の成分が変わってしまうことで、目が乾き、角膜や結膜に障害がおこる病気です。ドライアイは目の充血、異物感、疲れ易い、重い感じなどの症状の原因であることも多く、パソコンや乾燥した室内環境の影響もあり、最近増加してきています。

 眼科では、涙の量や質がどのような状態にあるかを検査しながら、ドライアイであるか、他の病気であるかを調べますが、怖い検査ではありませんので、安心して受診して下さい。


ぶどう膜炎

ぶどう膜炎 2006.11.1発行優しい眼科クリニック第36号から>

 

今回は、眼科の病気の中でもあまり聞き慣れないものだと思いますが「ぶどう膜炎」についてのお話をしようと思います。

 

ぶどう膜炎

ぶどう膜とは、虹彩・毛様体・脈絡膜の3つをあわせた総称です。眼球全体を覆う非常に血流の豊富な組織で、目に栄養を与えたり、ピントを合わせたりする働きをつかさどっています。ぶどう膜炎とは、そのぶどう膜に炎症が起きるという病気です。と、言いましても分かりにくい話だと思いますのでそれでは毎度のことながら、ものを見る仕組みから復習していきましょう。

 

ものを見る仕組みから

人はどのような仕組みでものを見ているのでしょうか。ものを見る仕組みを考えながら、ぶどう膜の働きについて考えてみましょう。目の働きや構造はよくカメラに例えられます。黒目(角膜)のすぐ後ろに透けて見えるいわゆる茶目を虹彩といい、これは目の中に入ってくる光の量を調節する働きがあり、カメラのしぼりにあたります。この虹彩の後ろに水晶体という部分があります。水晶体はカメラのレンズと同じで、私達が見ようとするものを正しく、網膜(カメラのフィルムにあたる部分)に焦点を結ばせる働きがあります。この水晶体のピント合わせに虹彩から続く毛様体という部分が活躍しており、さらに毛様体で作られる房水という液体が目の圧力(眼圧)を一定に保ち、さらに水晶体に栄養を与えるという重要な働きをしています。網膜に映った像が視神経を通して脳に伝えられ、私達は、初めてものを見ることができるのです。脈絡膜は身体の中でも血管の豊富な部分で網膜の裏側から栄養を与えてくれています。また、脈絡膜は色素の多い組織で、暗室効果を作り、網膜に鮮明な像を結ぶ助けをしています。このように虹彩・毛様体・脈絡膜からなるぶどう膜はものを見るために重要な働きをしてくれています。

 

ぶどう膜炎の原因

ぶどう膜炎は、そのぶどう膜に炎症が起きるという病気です。ぶどう膜炎の原因は、大きく3つに分けて考えられています。

1.外因性細菌やウイルス、カビなどの感染

2.内因性免疫異常が主なもの

     原田病、関節炎合併例、サルコイドーシスなど

3.原因不明ベーチェット病など

 

ぶどう膜炎という診断は、眼科で下されますが、それは眼症状を総称したもので、何が原因でぶどう膜炎が生じているかの確定診断をつける必要があります。確定診断のためには、眼科的検査を行うことはもちろん、血液検査、胸部レントゲン検査、ツベルクリン反応などのほか、場合によっては髄液検査、生検といって炎症のある部位を一部採取して病理学的検査に提出することもあります。サルコイドーシスを疑う場合は、呼吸器内科の先生に相談したり、ベーチェット病を疑う場合は皮膚科の先生に診察をお願いしたりする必要がでてきます。色んな検査をしても、その原因の確定診断がつかない、いわゆる原因不明のぶどう膜炎が実は一番多いのです。

 

ぶどう膜炎の症状

それでは、ぶどう膜炎の症状には、一体どんなものがあるのでしょうか?どんな症状が出たら眼科を受診すべきなのでしょうか。

   目が赤い

   目がゴロゴロする

   目が痛い

   まぶしい

   涙っぽい

   かすんで見える

   黒いものが飛んで見える

   霧がかかったように見える

   歪んで見える

   ものが小さく見える

といった症状が、ぶどう膜炎の代表的な症状と言えます。しかし、これらの症状はぶどう膜炎に特有な症状ではなく、他の目の病気でも起こりうる症状ですので、これがあれば即ぶどう膜炎という訳ではないのです。目の前の方の炎症(虹彩毛様体炎)であれば、目が赤い、ゴロゴロする、痛い、まぶしい、涙っぽい、かすんで見えると言った症状が起きやすいのです。目の奥の方の炎症(網脈絡膜炎)では、脈絡膜からさらに内側にある網膜や硝子体と呼ばれるゼリー状の物質が濁ることにより、視力低下、目のかすみ、飛蚊症(黒いものが飛んで見える)、歪んで見える、小さく見えるなどの症状が現れます。症状が進行してからでは、視機能に障害を起こすこともありますので、速やかに眼科を受診することをお勧めします。

 

ぶどう膜炎の治療

ぶどう膜炎の治療は、どうするのでしょうか。病気の治療の基本は、原因に対しての根治療法です。しかし、ぶどう膜炎は原因不明のことも多く、炎症を抑えて、視力障害を起こす合併症を食い止めるという対症療法が主体になってしまいます。虹彩毛様体炎に対しては、点眼薬が有効です。特に炎症を抑えるステロイド点眼薬が効きます。虹彩が水晶体と癒着するのを防ぐために散瞳剤を用いることがあります。網脈絡膜炎のときには、ステロイド薬や免疫抑制剤の全身投与が必要になってきます。目の奥の方の炎症を抑えるためには、点眼薬では十分な量の薬が届かないと考えられるからです。ステロイド薬は炎症を抑える力が非常に強く、頼りになる薬です。効果が強い反面、副作用もありますので、症状に合わせて、副作用に注意しながら薬の量を加減する必要があります。全身投与にも、内服、点滴注射と言う方法があり、投与しなければならない量が多い場合は点滴注射が必要となります。この場合は、入院治療が必要と考えられますので、入院できる施設に紹介させていただきます。ぶどう膜炎は、お薬による治療ですぐ治らず、治療が長引くことがあります。ステロイド薬を使っていることも多いですから、自己判断で通院治療を止めず、視力障害を残さないよう一緒に頑張って治しましょう。


雪目

雪目<2007.2.1発行 優しい眼科クリニック第39号から>

 

2

 1年の中でも、朝の気温が最も下がる季節になりましたね。私は小学校入学のときは帯広に住んでいたのですが、3年生の時に陸別町という十勝の中でも更に田舎に引っ越し、中学1年の夏までの4年間を過ごしました。そこは冬は非常にシバれる町で当時は、朝の通学はマイナス30以下ということもあったと記憶しています。学校に着いた時には、鼻水が凍っているということも日常茶飯事でしたので、誰もつっこんだり、ボケたりもしませんでした。

 ご存知の方もお出でになると思いますが、家の暖房は糠(ぬか)ストーブという、おがくずを燃料にするストーブでした。バケツのお化けみたいなものにおがくずを入れておいて、ストーブの上にセットしておき、下の方から燃えていきますので、タイミングによっては下の方に空洞ができてしまい、ある時ドサッとおがくずが落ちて、ストーブの周りにいると舞ったおがくずをかぶってしまうと言うハラハラドキドキのストーブでした。でも、ストーブから離れると非常に寒いので、ストーブの近くに陣取っておいて、怪しいなと思った時には、お化けバケツの横っ腹をたたいて、おかくずを落とす、なんてことをやっていたことを思い出します。

スケート好きー

 そんな寒い町で育った私ですが、寒さには滅法弱い軟弱派なのです。「子どもは風の子」といいますが、うちの子も寒い中、毎晩のようにスキーに出かけています。

 私は、と言えば、全くスキーは駄目なんです。スケート王国十勝の出身ですから、小学校時代の体育はスケート授業で、スピードスケート。中学校ではアイスホッケーが体育授業でした。特に陸別町はスケートに気合が入っていました。それもそのはず、当時の女子スピードスケートのオリンピック候補選手が陸別町出身だったのです。陸別町の郷土の誇り、長屋真紀子さんがその方です。昭和51年(札幌オリンピックの次の)インスブルックオリンピックに出場し、昭和55年レークプラシッドオリンピックでは、女子500mで見事5位入賞を果たした実績をお持ちです。その後、橋本聖子さん、岡崎朋美さんという素晴らしい実績を残した選手がいらっしゃいますが、当時の私たちは長屋真紀子さんの力強い滑りに熱狂したものでした。なんて書いてきますと、私もスケートに情熱を燃やし、良い記録を出していたかのようではありますが、世の中そんなに甘いものではありませんでした。なにせ、当時の私は背が低く(当時だけでなく、現在も高くはないですが)今とは比べものにならないくらい痩せておりましたので、力強い滑りができず、特に向い風になるといくら頑張ってもなかなか前に進まないという悲しい結果に終わっていました。

 

前置きが長過ぎましたが

 いつになったら目の話になるんだ、という感じですがスケートやスキーなどのウインタースポーツでも、夏の日焼けのように雪焼けすることがありますが、ウインタースポーツに関連する目の病気として「雪目」があります(やっと目の話になりましたね)。天気の良い日に、戸外でスケートやスキーをした夜になって、両目が赤くなり、ゴロゴロして涙が出て、痛くなることがあります。これが一般的に言う「雪目」です。雪眼炎(せつがんえん)とも言いますが、雪が直接悪さをしているわけではなく、紫外線が直接または雪面で反射して目に当たることが、その原因です。目の表面の敏感な角膜が紫外線の作用によってただれて、細かい傷がつくことによって、激しい痛みを引き起こします。ウインタースポーツを楽しむ時には目にも紫外線対策をお忘れなく。ゴーグルやサングラスで冬の強い紫外線から大切な目を守りましょう。

 

紫外線による角膜炎

 「雪目」だけでなく、紫外線によって角膜炎を起こす原因が他にもあります。有名なものとしては、電気溶接をしていた人が夜中になってから、両目に激痛が生じるという電気性眼炎です。紫外線による角膜炎が雪目もそうですが、通常両眼に生じ、左右大体同じ時間に同じように痛くなるという特徴があります。ただし、溶接などの原因となることをしてから、痛みがでるまでにタイムラグがありますので、本人は原因と結びつかないと考えることがあります。

 

本当にあった怖い(人の)話

 実際にあった話としまして、救急当番の夜中の1時くらいに両眼が痛くて、寝ていられないと友人に手を引かれて両目をタオルでおさえて受診した20代の男性がいました。両眼の角膜上皮が全面に渡って傷ついており、白目も充血のため真っ赤になっており、涙がひどく出ている状況でした。所見からは紫外線による角膜炎が考えられましたが、原因を特定できなければ、確定診断になりません。

私「溶接をしていませんでしたか?」

患者さん「してない!」

私「殺菌灯を見ませんでしたか?」

患者さん「見てない!」

患者さん「うるさいこと言ってないで、早く治せよ、コラア」

と、脅かされてしまいました。怒りたくなるほどの痛みということで、とりあえず納得して治療してから、再び尋ねてみましたら、その人のすぐ横で電気溶接をしていて、その人は遮光用メガネをせずに溶接の光を見てしまっていたようです。

 

 溶接光や殺菌灯には、太陽光に含まれる紫外線より波長の短い260-290ナノメートルの波長の紫外線が多く含まれており、角膜に対する毒性がより強いのです。目の中にゴミが入ったり、目にモノが当たって角膜に傷がついた場合は、目を閉じていれば、痛みや異物感は治まることが多いのですが、電気性眼炎の場合は、目を閉じていたとしても目の痛みが治まりませんので、眠れないことになってしまいます。といいますと、非常に怖い病気のようではありますが、遮光用メガネをかけることによって確実に予防できますので、ご安心を。