赤ちゃんの目の病気

 

斜視

 

弱視

 

3歳児眼科健診

 

眼科学校健診


赤ちゃんの目の病気

赤ちゃんの目の病気<やさしい眼科通信20118月号第5回赤ちゃんの目の病気から>

 

長引く目やにには要注意

 先月号まで、眼科の検査についてお話させていただきましたので、これからは目の病気について説明します。目の病気は色々ありますので、赤ちゃんから高齢の方まで、眼科には幅広い年齢層の患者さんが受診に訪れます。そこで、まず赤ちゃんによくみられる病気についてのお話を。

 

赤ちゃんの目やに

 赤ちゃんの目で、最初に気になることが多いのは目やにだと思います。目やにの多くは、一時的なもので心配のないことが多いのですが、片目だけ目やにが多く、またなかなか治らない場合は、先天性鼻涙管閉塞症による新生児涙嚢炎が疑われます。

 

涙の通り道について

 先天性鼻涙管閉塞症の説明の前に、涙の通り道についてお話させていただきます。

 涙は上まぶたの外側にある涙腺(るいせん)という場所で作られます。分泌された涙は目の表面を濡らした後、目頭の上下にある小さな穴(涙点)に吸い込まれ、細い管(涙小管)を通って涙嚢(るいのう)と呼ばれる涙のふくろにたまり、さらに鼻涙管を通って、鼻の奥に抜けていきます。これを涙の道、涙道といいます。

 

先天性鼻涙管閉塞症

 赤ちゃんの鼻涙管の出口に生まれつき膜が張っていることが、先天性鼻涙管閉塞症の原因です。膜のために、涙が鼻の奥に抜けないので、涙目になります。また、涙の流れも滞りますので、そこにばい菌が繁殖し、目やにが出るようになります。

 まずはお母さんに、涙嚢部マッサージとばい菌止めの目薬を指導します。軽く目頭の下の涙嚢部をマッサージすることによって、そこにたまっている涙と目やにを押し出してから、ばい菌止めの目薬をさします。生後7ヵ月くらいまでは、この治療で様子を見るようにしています。それでも症状が治らない場合は、鼻涙管開放術といってブジーと呼ばれる細い棒を涙道に通して、膜を破る治療を行うことになります。

 マッサージと点眼で自然に治る場合があること、7ヵ月以上になってしまうと、赤ちゃんを抑えて処置することが難しいこと、7ヵ月くらいまでは、感染に対する抵抗力が弱いので早期の手術はお勧めできないことが7ヵ月まで待つ理由です。

 しかし、赤ちゃんによって体の大きさが異なりますので、体格のよい赤ちゃんの場合は、抑えることが出来るうちにと考えて、生後6ヵ月で手術を行う場合もあります。これは、抑えられない場合は全身麻酔で行わなければならないことになってしまうので、それであれば、早めにと考えて行う場合があるということになります。

 

下眼瞼睫毛内反症

 赤ちゃんの下まぶたのまつ毛は、黒目に触っていることがよくあります。赤ちゃんの顔はぽっちゃりしていて、まぶたが膨らんでいることが多いので、まつ毛が黒目に触りやすいのです。幸いに赤ちゃんのまつ毛は、とても柔らかいので黒目に触っていても、特に問題を起こさないことが多いのです。また成長とともに、まつ毛は次第に外をむいて来て、黒目に触れなくなってきます。多くは45歳になって顔が引き締まってくるにつれて、自然に治ってくることが多いのです。まつ毛が黒目に当たることによって傷がつくと、目やにがでたり、涙目になったり、白目が赤くなったり、外に出るとまぶしがったりするような症状を起こします。目薬を使っても症状を繰り返したり、45歳を過ぎても全く治らない場合は、全身麻酔での手術を相談することになります。

 赤ちゃんの目やには、結膜炎が原因のことが最も多いのですが、先天性鼻涙管閉塞症や下眼瞼内反症が原因で、なかなか自然には治らないこともあります。ただの目やにと考えずに、長引いたり繰り返したりする時は、眼科に連れて来てください。


斜視

斜視<やさしい眼科通信20119月号第6回から>

 

お子さんの目の向きがおかしいと思ったら

 お子さんの目の向きがおかしいと思ったら、斜視の可能性があります。私たちは、左右の目でものをまっすぐとらえることによって、立体感や遠近感をつかむことができます。もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんの視力はとても弱いので、思いがけない目の動きをすることもあります。でも、目の向きがおかしいと思ったら、眼科に連れて来てください。

 

赤ちゃんの目の機能の発達

 生まれたばかりの赤ちゃんは、光が分かるくらいで、あまり良く見えていないと言われています。生後1カ月で目の前の手が動くのがわかるようになります。6カ月で0.04から0.08くらい、1歳で0.3くらい、3歳で1.0が見えるようになっていると考えられています。

 視力と一緒に両眼視機能も発達してきます。両眼視とは、左右の目でとらえた像を、脳で一つの情報にまとめて受け取る働きのことで、立体感や遠近感は、この働きによって得られます。両眼視機能も3歳くらいで完成すると考えられています。人の目は、生まれつき視機能が備わっているのではなく、乳幼児期にピントのしっかりあった像を両方の目で同時に見ることによって、順調に発達してくれるのです。

 

斜視とは

 斜視は左右の目の視線がそろわずに、片方の目が別の方向を向いてしまう状態で、子どもの約2%に見られます。目の位置によって、上下内外の斜視に分類されます。

 片方の目が真っすぐ向いている時に、他方の目が内側に寄っているのを内斜視、外側に寄っているのを外斜視、上(または下)に寄っている場合を上(下)斜視と言います。

 

内斜視とは

 生まれたての赤ちゃんにみられる内斜視が、乳児内斜視で、片方の目がかなり内側に寄っている場合が多く、外側に動きにくいのではないかと思われることもあります。乳児内斜視は両眼視機能の発達の妨げになることがわかっており、早期手術の適応になると考えられます。

 赤ちゃんの顔は、鼻の付け根の部分が十分に発達していないため、鼻側の白目が外からは見えずに、見かけ上、内斜視にみえる偽内斜視ということがあります。内斜視なのか偽内斜視なのかを見極めるためには、顔にライトをあてて、そのライトの反射が角膜の中央の瞳に両方とも当たっているかどうかで判断します。

 赤ちゃんが診察室で機嫌良く、ライトを見てくれないこともありますので、内斜視が心配な親御さんは、家庭でフラッシュをつけて顔の正面からの写真を撮って、持って来ていただければ判断の参考になります。

 1歳くらいからみられるようになる内斜視に調節性内斜視があります。視力が出て来て、ものを良く見ようとする時期に、強い遠視があるためにピントを合わせる力を働かせるために内斜視が生じるものです。調節性内斜視の治療は、しっかりとあった遠視の眼鏡をかけることです。強い遠視は治すことはできませんが、眼鏡で内斜視は治すことができ、視力、両眼視機能も正常に発達することが期待できます。

 

外斜視とは

 間欠性外斜視は、普段は外斜視ではないのに、疲れたとき、眠たいとき、ボーっとしている時に外斜視になるもので、斜視の中で最も多いタイプです。外に出た時に片目つぶりをすることもあります。普段は左右の目で同時に見ることができていますので、弱視になる心配はありません。外斜視になる頻度や時間が多くなったり、真っすぐにするのに目の疲れが気になる時には、手術を考えてもらうことになります。

 常にどちらかの目が外に寄っているのを恒常性外斜視といいます。治療は手術ですが、手術によってものがダブって見える複視が起こる場合があるので、注意が必要です。

 

 上(下)斜視とは

 上下の斜視は下斜筋過動、上斜筋麻痺などが原因で起きることもあり、眼性斜頸といって首を傾げる原因になることもあります。また、他の斜視に合併していることもありますので、眼科で詳しい検査を受けてください。

 

 斜視を放置しておくと、弱視という別の病気を引き起こす原因となることがあります。これは専門的な検査をうけないと判明しません。最初の手がかりは、左右の目の位置関係がまっすぐか、たまにどちらかにはずれることはないか、を注意してあげることです。

 正面の顔の写真を何枚か撮っておくと診察のうえでも参考になりますので持ってきていただけるといいと思います。また、普段は真っすぐで、時々はずれるという場合も写真とか最近はビデオなどの動画を持って来てくれる親御さんもいらっしゃいます。目の向きがおかしいと思ったらぜひ、眼科に連れて来てください。


弱視

弱視2006.10.2発行 優しい眼科クリニック第35号から>

 

今回は、お子さんの目の病気であります「弱視」についてお話させていただきます。

 

弱視

弱視という言葉には二つの意味があり、一つは「医学的弱視」もう一つが「社会的弱視」です。眼科で弱視といいますと「医学的弱視」のことなのですが、親御さんは「社会的弱視」と受け取って、行き違いが起こってしまうことがあり、言葉足らずを反省することがあります。「医学的弱視」とは、網膜や視神経に異常がないにもかかわらず、視力の成長期において、角膜から網膜の前までに何らかの異常があり、視力の発達が妨げられて、良い視力が得られないことをいいます。一方、「社会的弱視」とは、原因を問わず両眼での矯正視力(一番合っている眼鏡をかけた視力)が0.040.3に低下していたり、視野が極端に狭くなっている状態のことです。眼科でいう弱視「医学的弱視」は、適切な時期に適切な治療をすると治すことのできる弱視なのです。

 

どうして弱視になっちゃうの?

生まれたばかりの赤ちゃんの目は、あまりよく見えていないと考えられています。だんだんと目の前の手が動くのがわかるようになり、見つめるようになり、生後2ヵ月くらいで人や手の動きを追いかけて見るようになってきます。そして徐々に視力が上がってきて、67歳くらいまでにほぼ大人の視力になると考えられています。生まれつき視力が備わっているわけではなく、乳幼児期からものを見て、網膜にピントのあった像を結ぶ刺激を繰り返すうちに視力を獲得することができるわけです。この視力の発育に重要な時期に、何らかの原因があり、視力の発達が途中で止まってしまい、眼鏡をかけても視力が出ない状態を弱視といいます。

 私は弱視の説明の時、『お子さんの目にまだ、スイッチが入っていない状態です』と伝えています。赤ちゃんの目は、作りは問題なくても働きの点から考えますと、まだ未完成品です。赤ちゃんの目にしっかりとピントのあった像が結ぶことが、目の働きにスイッチを入れるというイメージです。目の働きにスイッチが入って、初めて目が完成するわけです。

 

弱視の種類として、

強い遠視、乱視のために目にしっかりとピントのあった像を結ぶことができない屈折異常弱視

左右の目の度数に差が大きい場合、度数の強い方の目にピントのあった像を結ぶことができない不同視弱視

斜視のために、視線がずれてしまう方の目にピントのあった像を結ぶことができない斜視弱視

先天白内障、眼瞼下垂などの病気が原因となり、目にピントの合った像を結ぶことができない形態覚遮断弱視、眼帯をしたことが原因のものも含まれます。

の大きく4つに分けられます。

 

上記の弱視のうち、不同視弱視の発見が遅れることが多く見られます。見た目には何の異常もありませんし、片方の目の視力が良いので、お子さんの行動から発見されることが少ないのです。以前は就学時検診で初めて弱視が発見されることが多く、治療が上手く行かない場合もありました。平成210月からは、3歳時健診に視力検査が加わりましたので、平成生まれのお子さんは、3歳時健診で視力検査をご自宅で行うようになりました。それでも、小学校に入ってから、弱視が発見されるお子さんもいらっしゃいます。3歳になりましたら、ほとんどのお子さんの視力検査ができます。ご心配でしたら、是非ご相談ください。

 

弱視の治療

67歳くらいまでに、ほぼ大人の視力になると考えられていますので、その前に治療を行うことが効果的です。3歳から治療した不同視弱視では、1年で75%が矯正視力0.7以上に回復するというデータが発表されています。一方、入学後に治療を開始した場合は、長い治療期間が必要になってしまうこともあります。しかし、成長に個人差があるように治療効果にも個人差がありますので、あきらめずに頑張って治療を受けていただいております。入学後から治療を始める場合は、本人が治療の必要性を自覚できることから、積極的に取り組めるという利点もあります。屈折異常弱視、不同視弱視の場合は、まず眼鏡をかけてもらうことが、治療の第一段階です。眼鏡をかけて、しっかりとピントのあった像を結ぶことが大切です。でも、この時点ではピントの合った像を結ばせても、本人ははっきり見えません。近視の眼鏡と違って、かけた時点でははっきり見える眼鏡ではないのです。頑張って眼鏡をかけているうちに目にスイッチが入って徐々に視力が上がってきます。不同視弱視の場合は、眼鏡に十分慣れた上で、「健眼遮蔽法」を行うことがあります。これは、良い方の目にアイパッチをして、弱視眼のみを使ってもらう訓練です。良い方の目の視力が落ちていないことを確認しながら弱視眼の視力が伸びてくるのを待つわけです。弱視の治療はすぐに結果が出るわけではなく、ご本人、親御さんの根気と協力が必要です。

『おたまじゃくしから、カエルになるように頑張ろう』って、お子さんに言ってみようとも思いましたが、きっと『嫌だー、気持ち悪い、カエルになんてなりたくないー』って言われるだろうな、と思って、この例え話は封印しています。


3歳児眼科健診

3歳児眼科健診<やさしい眼科通信201111月号第8回から>

 

最も低年齢で行われる検査

 乳幼児期における正常な視機能発達を達成するためには、それを阻害する可能性のある因子を早期に発見し、早期に適切な対処を行なうことが重要です。平成3年に、母子保健法の定めるところにより、3歳児眼科健康診査事業が都道府県を実施主体に行なわれるようになり、平成9年以降は実施主体が都道府県から市町村に移管されました。

 

目標は早期発見

 3歳児眼科健診の第一の目標は、視覚障害の早期発見です。その中でも弱視の検出が重要です。近年の研究で明らかにされている弱視の80%以上は、不同視弱視と屈折性弱視であることから、早期に視力検査を行なって対応することが必要です。弱視の治療はできるだけ低年齢期に発見し、治療を開始することが良好な治療効果につながると考えられています。

 

視力検査を行う意義

 視力の発達する期間に、目にピントが合っていない状態などがあると、視力の発達が妨げられてしまった弱視になってしまいます。弱視の治療には主にメガネを用いて、ピントが合った状態にすることで、視力の発達を助けます。大切なことは、早く発見して早く治療を始めることで、自覚的、他覚的に検査が可能な最も低年齢と考えられる3歳児で発見することに意義があります。

 高度な両眼弱視では、日常生活に不自由をきたし、その子どもの行動などによって保護者が気付きますが、問題になるのは片眼の弱視です。片眼弱視の子どもは、一般的に不自由を訴えませんし、行動にもほとんど現れませんので、保護者も気付くことがほとんどありません。しかし、片眼弱視は、正常な両眼視ができませんので、視力を正常またはそれに近い状態まで上昇させておかないと一生正しい両眼視機能を得ることができなくなります。

 3歳児眼科健診が行なわれる前は、片眼弱視は就学前検診に発見されることが多かったので治療効果が悪い上に、学業を始める時期に治療を行なうので、子どもたちに大きな負担をかけていました。3歳児で発見されるようになり、就学までに治療効果が上がるようになってきています。

 

健診の方法

 3歳児健診は、一次健診は家庭、二次健診は市町村保健センター、学校、公民館など、三次健診は眼科医療機関などで行なわれます。

 一次健診は視力検査とアンケート調査によるスクリーニングが目的です。自宅に絵視標の視力検査表が郵送されますので指示に従って、お子さんの視力検査をしてください。検査は最初、両目で絵視標を理解しているかどうかを確認した後、片目をふさいで検査します。片目をふさぐ時は、左右どちらか嫌がらない方の目から、先にふさいで検査を行ないます。片目をふさぐことを嫌がった場合は、ふさがれていない方の目の視力が悪いことがありますので、二次健診の時にそのことを伝えてください。

 入園時や就学時に初めて視力不良を指摘されたお子さんの保護者の方に3歳児健診について尋ねてみますと、「受診していない」「視力検査はしなかった」「うまくできなかったが、ふざけていると思った」「生活態度に変わったことがなかったので、見えていると思った」といった答えが多いようです。うちの子は大丈夫と思っても、また忙しくても面倒がらずに、ぜひ自宅で視力検査をしてみてください。 視力検査が上手にできなかった時は、二次健診の時に申告して再検査を希望していただくことをお勧めします。

 アンケート調査は、「目つきがおかしいですか」「まぶしがりますか」「目を細めて見ますか」「物に近付いてみますか」「頭を傾けたり横目でみたりしますか」といった質問に答えていただきます。

 自宅の検査で片目ずつ絵視標が答えられなかった場合や視力検査ができなかった場合、アンケート調査で一つでも「はい」の記載があった場合は、二次健診で再検査を行ないます。

 二次健診で片目ずつ絵視標が答えられなかった場合、眼位異常、その他眼疾が疑われ精密検査を要すると認めた場合、努力しても視力検査ができなかった場合には、三次健診として眼科医療機関に紹介されます。

 

健診の実績

 日本眼科医会の調査によると、二次健診受診者は、3歳児眼科健診対象者の6265%にとどまっているようです。しかしながら、3次検診における異常発見率は50%以上の実績がありますので、3歳児健診を受けることによって、屈折異常、斜位および斜視、屈折異常弱視・不同視弱視、斜視弱視だけでなく眼球震盪症、眼瞼下垂、強膜疾患、水晶体疾患、眼底疾患が見つかっていると報告されています。

 乳幼児は、見え方に異常があったとしても、自ら訴えることはできません。3歳児眼科健診は、そのためのよいチャンスです。3歳児健診の書類が送られてきましたら、まずはお子さんと一緒に視力検査をしてみてくださいね。


眼科学校健診

370方式の視力検査」2016年グラフ旭川4月号市民の健康ガイドから>

 

 以前の話になりますが、人気テレビ番組「踊る!さんま御殿!!」で「世代間ギャップを痛感した時」というテーマが取り上げられ、40代の上司が、「子どもの時、学校健診の視力検査で0.2だった」という話をしたところ、それを聞いた20代の後輩に「私はCでした」と言われ、「??」だったということが紹介されていました。学校健診の視力結果は、世代間ギャップになっているのですね。

 

眼科学校健診

 昭和33年に学校保健法が公布され、その後何度か改正されながら、現在に至っています。眼科に関する定期健康診断は「視力検査」「眼の疾病および異常の有無」の2項目について行なうことになっています。このうち視力検査は、眼科学校医自らが行なう眼科健診に先立って通常実施されており、保健調査とともに眼科健診の予診的検査として位置づけられています。したがって、眼科健診では「眼の疾病および異常の有無」のほか、保健調査や視力検査の結果にも注意を払いながら、必要に応じて積極的に児童生徒へ助言や指導を行なうことになります。

 

3・70方式とは

 学校保健法施行規則の一部が改正され、平成441日から視力検査は、「1.0」「0.7」「0.3」の3指標で判定してよいことになりました。視力の検査結果が1.0以上であるときは(A)、1.0未満0.7以上であるときは(B)、0.7未満0.3以上であるときは(C)、0.3未満であるときは(D)、と記入してもよいことになりました。

 

3・70方式採用の理由

 3つの指標のみで視力検査を行なうことになった理由は、次の5つが挙げられます。

1. 学校の視力検査の目的は、黒板の字がきちんと見えているか、学業にさしつかえないか、眼科学校医の診断・指導が必要かどうかを判断するために行なわれます。判断の基準としては

  視力0.3=教室の最前列でもこれ以下の視力では黒板の字が見えにくい

  視力0.7=教室のどこからでも黒板の字が一応見える最低視力

  視力1.0=一応健常視力

  が用いられます。

2.  370方式は授業にさしつかえないかをみる目的に適しており、指導も行ないやすい。

3. 視力測定が能率よく行なえる。

4. 視力の細かい変動に子どもたちがこだわらなくなる。

5. 普通免許の視力基準も片目0.3以上、両目で0.7以上となっているように、社会的にも日本では0.30.7が重視されています。

 

子どもの視力の揺らぎ

 学童の視力は変動が大きく、いつも一定した値を得ることが難しいと言えます。一度の視力検査の結果が悪かったとしても、その日の体調、目の疲れ具合などによって、視力は変動します。特に学校検診の時の、みんなが一列に並んで騒がしいような中で検査した場合には、内気な子は視力が悪く出ることもあります。また、少し目を細めただけで視力はすごく上がります。視力の良い子どもの視力は安定していることが多いのですが、視力低下が始まった時期の子どもの視力は特に揺らぎがみられます。学校現場では条件の違いもあり、0.1きざみで細かく測ることはあまり意味がありません。学校検診の結果のみで一喜一憂せずに、視力低下を指摘された場合は、眼科での再検査をお勧めします。

 

眼の疾病および異常の有無

 眼科健診では、保健調査や視力検査の結果をふまえて以下の項目をチェックしています。

1. 眼位のチェック:カバーテスト、カバーアンカバーテスト、交代カバーテストにより、斜位の有無、斜視の有無ならびに種類を検討。

2. 眼瞼のチェック:腫脹の有無(浮腫・炎症の鑑別)、変色の有無をチェック。また、内反・外反の有無や睫毛乱生の有無をチェック。

3. 眼瞼結膜・球結膜のチェック:充血・浮腫・濾胞の有無ならびに異物・眼脂の有無をチェック。

4. 角膜のチェック:角膜表面の混濁・傷・異物の有無のチェック。

5. 瞳孔に光を当て対光反応及び瞳孔径の確認、水晶体混濁の有無をチェック。

 

色覚検査

 学校保健法施行規則の一部改正により、平成15年度からそれまで小学4年の児童全員に実施されていた色覚検査が健康診断の必須項目から削除されました。そのため現在、中高生の多くは色覚検査を受けることなく進学・就職と向き合っており、色覚に係る問題が急増しました。そのため平成26年に文部科学省から通知がなされ、色覚検査は、児童生徒や保護者の事前の同意を得て個別に検査、指導を行なうことが再確認されています。児童生徒が自身の色覚を知らないまま不利益を受けることのないよう、保健調査に色覚に関する項目を新たに追加され、保護者への周知が図られるように改善されています。

 

「要再検査」を指摘されたら

 「要視力再検査」の用紙をもらったら、一度眼科での検査をお勧めします。学校健診では、視力低下の原因が、近視か遠視か乱視か病気によるものかはわかりません。また、眼鏡が必要かどうかもわかりません。仮性近視であれば、点眼治療で視力が回復する可能性があります。

 「眼疾病の受診勧告」をもらった場合も、眼科を受診してください。学校健診の際には行なえない精密検査で、治療が必要な状態かどうかなど、より詳しい説明をさせていただきます。