近視・仮性近視

 

めがねのかけはずし

 

 乱視

 

老眼


近視・仮性近視

仮性近視・近視2004.5.1発行 優しい眼科クリニック第6号から>

 

お子さんの学校検診・仮性近視・近視

眼科にとってはこの季節の風物詩でもあります「お子さんの学校検診・仮性近視・近視」について、お話させていただこうと思います。

 

悲しい体験

優しい眼科通信第4号をお読みでない方に・・・『小学校の視力検査で眼科に行くように言われ、気楽に行ってみたら、「何故こんなになるまで放っておいたんだ」と眼科医に叱られ、その帰りには、眼鏡をかけて悲しい気分だった、というのが私の小学校5年生の春の体験です。』私の記憶が正しければ、の話しですが・・・・小学校入学の時は、両眼2.0、3年生で両眼1.5、4年生で両眼1.2でしたので、視力には自信がありました。自分では、目が見えにくいという感じは全く持っておりませんでした。ところが、学校で視力検査を受けてみると、「アレ下の方の字が全然見えない・・・」という感じでした。「ウソでしょ?」という感じで、でた視力は、なんと両眼0.3。そこで、眼科受診してください、という例の用紙をもらったわけです。自分としては黒板の字も見えるし、日常生活で全然困っていないし、という気持ちでしたが、その頃は、毎日長時間漫画ばっかり読んでいたものですから、何となく後ろめたい気持ちもあり、素直に眼科に行くことになりました。当時は十勝の陸別町(シバレるので有名な)に住んでおりましたので、学校を休んで汽車に乗って、北見市の眼科(今はもう無くなっています)に、生まれて初めて行きました。その眼科は、待合室のベンチに座れないほど込んでいました。そして、冒頭の眼科医に叱られて・・・ということになってしまいました。

 

視力って

視力って揺らぐものなんですよね。一度の視力検査の結果が悪かったとしても、その日の体調、目の疲れ具合などによって、視力は変動します。特に学校検診の時の、みんなが一列に並んで騒がしいような中で検査した場合には、内気な子は視力が悪く出ることもあります。また、少し目を細めただけで視力はすごく上がります。視力の良いお子さんの視力は安定していることが多いのですが、視力低下が始まった時期のお子さんの視力は特に揺らぎがみられます。ですので、学校検診の視力の結果で一喜一憂せずに、ご心配でしたら眼科での視力検査をお勧めします。もちろん「何故こんなになるまで放っておいたんだ」と叱ったりは、しませんので。

 

3・7・0方式

平成4年4月1日から学校保健法施行規則の一部が改正され、学校検診の視力検査は、0.30.71.0の3指標で行うことになりました。これは、0.3で教室の一番前から黒板の字が見える視力、0.7で教室の一番後からでも黒板の字が見える、1.0で健常視力の3つを基準としています。視力が学業に影響を及ぼさないか調べるのに、合理的ですし、お子さんの視力の揺らぎを考えましても、理にかなっている方法だと思います。

 

学校検診で「要再検査」の用紙をもらったら、

やはり一度眼科での検査をお受けください。学校検診では

1)視力低下の原因が、近視か遠視か乱視か病気によるものかはわかりません。

2)眼鏡が必要かどうか、わかりません。

3)仮性近視であれば、点眼治療で視力が回復する可能性があります。

 

仮性近視とは

近くの物をジッと見ていると、近くにピント合わせをするために毛様体が緊張し、水晶体が厚くなります。長時間近くの物を見ていると、毛様体が緊張を続け、近視と同じように遠くが見えにくい状態になってしまいます。この状態が仮性近視ですが毛様体の緊張をほぐす点眼薬による検査で、仮性近視の有無がわかります。視力低下の原因として仮性近視が考えられる場合、毛様体の緊張をほぐす調節麻痺剤(ミドリンM)の点眼治療を行います。薬が効いている間は、まぶしく近くが見えにくくなります(瞳が大きくなるため)ので、寝る前に点眼してもらいます。寝ている間に、目が遠くを見ているような状態にする目薬ですが、夢がまぶしくなったり見えにくくなったりすることはありません。お子さんの視力低下の場合に検査をしてみると、仮性近視の関与しているケースは多く見られます。点眼薬で視力が回復する可能性もあるのです。でも段々と身長が伸びてくる頃から、近視になってくることが、日本人には多いようです。

 

仮性近視ではなく近視と言われたら

検査の結果、仮性近視ではなく近視と診断されたら残念ながら点眼薬では視力回復できません。それでは、すぐ眼鏡でしょうか。親御さんのお気持ちとしては、「なるべく眼鏡はかけさせたくない」「これ以上視力を悪くさせたくない」「なんとかならないか」ということが多いと思います。私はお子さんにとって重要なことは学校生活に支障がないかどうか、ということだと思います。私もそうだったように、視力が低下していても、急な変化ではありませんので、不自由は感じないものです。でも、黒板の字を読む時に、目を細めたり、他の子よりも時間をかけて見ていた可能性があります。やはり、両眼で0.3を切るようでしたら、そろそろ眼鏡と考えた方がよろしいかと思います。「眼鏡はかけさせたくない」というお気持ちの中には、かけてしまったら近視が進むという誤解があるようです。身長が伸びるのを止められないように、近視も徐々には進行してしまいます。眼鏡をかけなくても近視は徐々に進むとお考え下さい。一般的には身長の伸びが止まった後も近視は少し進み、20歳台後半に止まるようです。

 

眼鏡かコンタクトレンズか

眼鏡が必要となってしまった時に、眼鏡かコンタクトレンズか、と考える親御さんもいらっしゃいますが、コンタクトレンズをお考えでも必ず眼鏡はお作りください。眼鏡をお持ちでない場合、コンタクトレンズで角膜に傷がついてしまった時などに、はずすと見えないということで、無理してしまう方が多いからです。大切な角膜を守るためにも、お家に帰ったらコンタクトレンズをはずし、眼鏡をかけることを、お勧めしています。

眼鏡・コンタクトレンズにかぎらず、目について疑問がありましたら、いつでも遠慮なくご質問ください。


めがねのかけはずし

「めがねのかけはずし」<ライナー健康相談 20031118日 カルテ43から>

 

Q:先日小学4年の娘にメガネを買いました。ひんぱんにメガネをかけたりはずしたりすると、視力がさらに低下すると聞いたことがあります。かけっぱなしにするか、極力かけないようにするか、迷っているのですが・・・。

34歳 パート/フラメンコママ)

 

この相談を、ライナースタッフがこんの優眼科クリニックの今野優院長にお聞きしました。

 

A:購入したメガネは、眼科でもらった「眼鏡処方箋」で作りましたか?メガネ屋さんに直接行って買いましたか?

 小学校の中学年から中学・高校と、視力の下がる人が増えています。この場合近視だと思われがちですが、中には逆に遠視であったり、かくされた目の病気のために視力が下がる場合もあります。

 特にお子さんの場合は、ピントを合わせる調節力が強いので、いわゆる仮性近視になっている場合もあります。

 お子さんの視力低下の原因を調べる検査として、調節麻痺剤の点眼薬を使う検査があります。この目薬をさして検査を行うと、近視・遠視・乱視の正確な度数を知ることができ、また同時に精密眼底検査も行うことができますので、目に病気がかくされていないかも調べられます。

 目の病気がなく、近視・遠視・乱視などの屈折異常だけとわかれば、よく見えて使いやすい無理のないメガネのデータが「眼鏡処方箋」としてできるわけです。購入したメガネが適切なデータに基づいて作られたものであれば、軽い近視の場合には、遠くを見る時にかけ、近くの物を見る時は、はずした方が楽にみえて良い場合があります。

 ある程度の近視では、近くを見る時にもメガネがあったほうが便利なので、お子さんの必要に任せてください。そのような場合のかけはずしでは、近視の度が進むようなことはありません。遠視や乱視のメガネは常時かけていたほうが、疲れがなく楽だと思います。

 一度、眼鏡処方箋をもらった眼科でご相談してみて下さい。


乱視

乱視2006.3.1発行 優しい眼科クリニック第28号から>

 

乱視

眼鏡屋さんで「近視だけでなく、乱視が少しありますね」と言われて、ドキッとしたことのある方は多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人です。小学校5年生から眼鏡をかけています。最初の眼鏡は近視の眼鏡だったのですが、次に眼鏡が合わなくなった時には「乱視がありますね」と言われました。何のことだか、よくわからないものの「何だか面倒なことに生っているのではないか」と少し心配しました。とは、言いましても小さい頃から楽天家でしたので、眼鏡屋さんを出た時には、良く見える眼鏡に変わったことに喜んでいました。子供なりに「近視で遠くが見えにくいのだから、遠視は近くが見えにくいのだろうかじゃあ、乱視は乱れて見えるって、どんなんだろう」と考えてみましたが、わからないまま医学生になりました。習ってみると、「なるほどね」という感じで、「乱視恐れるに足りず」ということが判明しました。という訳で、今回の通信は「乱視」のお話をしてみます。

 

物を見る仕組み

人はどのような仕組みでものを見ているのでしょうか。ものを見る仕組みを考えながら、乱視について考えてみましょう。目の働きや構造はよくカメラに例えられます。黒目(角膜)のすぐ後ろに透けて見えるいわゆる茶目は虹彩といい、これは目の中に入ってくる光の量を調節する働きがあり、カメラのしぼりにあたります。この虹彩の後ろに水晶体という部分があります。水晶体はカメラのレンズと同じで、私達が見ようとするものを正しく、網膜(カメラのフィルムにあたる部分)に焦点を結ばせる働きがあります。網膜に映った像が視神経を通して脳に伝えられ、私達は、初めてものを見ることができるのです。

 

レンズの役割

カメラのレンズの働きをするのが、水晶体です。若いうちは水晶体は弾力があり、近く・遠くを見る時に、水晶体が厚みをかえてピント合わせをしてくれます。オートフォーカスの精巧なカメラということになります。(水晶体の弾力性が衰えるために、近くにピントを合わせにくくなるのが、いわゆる老眼なのです。)水晶体のレンズの強さは眼球全体のレンズの強さの3分の1で、残りの3分の2の強さは角膜が担っています。つまり、角膜と水晶体の二つがレンズの働きをしています。

 

乱視とは

角膜と水晶体は完全な球面ではなく、縦横の丸みの大きさが異なっています。この縦横のカーブに差があることを乱視と言っています。角膜のカーブについて考えてみますと、角膜は野球ボールのようにまん丸ではなく、ラグビーボールを横にしたように縦のカーブが横のカーブに比べて強い場合が多く、このような乱視を直乱視と言っています。逆にラグビーボールを縦にしたような乱視を倒乱視(とうりゃんせ、ではございません)と言っています。多かれ少なかれ、ほとんどの方に乱視は見られますが、眼鏡による矯正が必要かどうかは、その程度の差によるわけです。ですので、「乱視がありますね」と言われても、「面倒なことになっている」わけではありませんので、ご安心を。

上が正視(近視も遠視も乱視もない目)、下が直乱視の模式図です。正視では縦も横も焦点が網膜で結ぶので、はっきりとした像が得られます。一方、直乱視では、縦方向の焦点が網膜より手前にあるため、網膜ではっきりした像がえられません。乱視の大きさや方向(軸)は、検査により数値として出てきますので、乱視が気になる方は受診の際にお尋ね下さい。自覚的には、乱視表により検出できます。放射線指標を片目ずつ見た場合に、濃く見える(逆に薄く見える)方向があれば、乱視の可能性があります。

 

乱視の矯正

では、乱視の矯正が必要な場合はどうするのでしょうか。眼鏡では、円柱レンズという特定の軸方向に度数の入っているレンズで矯正することが可能です。極端に強い乱視でなければ、眼鏡で矯正できると思います。

 

乱視用のコンタクトレンズ

乱視の主な原因は角膜乱視ですので、角膜に沿って載る通常のソフトレンズでは、上手く矯正できないことがあります。一方ハードレンズは、角膜の上に仮の球面角膜を作ることができるため、乱視の矯正に向いています。以前でしたら、乱視と言ったらハードレンズと考えられていましたが、最近では乱視用のソフトレンズ(トーリックレンズ)も改良され、現在では1日使い捨て、2週間・1ヵ月定期交換型のトーリックレンズもラインアップされています。トーリックレンズは乱視を矯正するために、軸が安定しなければ良好な矯正効果を得ることができません。その人の角膜の乱視軸で安定するような回転防止機構が考えられています。トーリックレンズは通常のソフトレンズに比べ、お値段が高いという問題点がありましたが、メルスプランの「マンスウエアトーリック」は、今までの「マンスウエア」と同じ月会費1890円でお使いいただけますので、費用面の問題は解決されたと考えております。また、他のトーリックレンズから変更された方のお話では、視力も安定しており、1ヵ月交換で汚れも付きにくいと、評判はすこぶるよろしいようです。ただ、乱視は人によって状態が違うため、乱視度数や軸、近視の度数から判断して、ハードレンズをお勧めすることもありますので、是非ご相談してください。


老眼

「ちょっと距離をおきたいの2017年グラフ旭川11月号市民の健康ガイドから>

 

 『ちょっと距離をおきたいの』なんて言われたら、背筋に寒~いものを感じちゃいますよね。といった話ではなく、目の前にあるものを見る時に、ちょっと距離を離したくなる話をしようと思います。

 「近くのものを見る時に、ちょっと距離を離したくなった」そんな変化は老眼の始まりかもしれません。老眼は誰もが避けて通ることができない、目の加齢に伴う変化です。40歳を過ぎたころから、少しずつ老眼の症状が出てきます。他の目の病気も出てくる可能性のある年代ですので、おかしいなと思ったら、眼科を受診してください。

 

水晶体の弾力が落ちると

 目の中に水晶体というカメラのレンズに相当する組織があります。カメラでは、レンズが前後に動くことによって遠くや近くにピントを合わせてくれますが、私たちの目は、水晶体がその厚みを変えることによって遠くのものや近くのものにピントを合わせることができます。しかし年齢とともに水晶体の弾力性がだんだんと弱くなるために、厚みを変えることができなくなってきます。そのために、近くのものにピントが合わせにくくなってくるのが、老眼です。

 

こんな症状が起きたら

 もちろん、ある日突然、水晶体が硬くなってしまうわけではありませんので、 だんだんと「アレッおかしいな」と思うことが 増えてきます。

「おかしいな」と思うこととして、

本を読む時、腕を伸ばしたほうが見やすい。

少し暗くなると、本が読みにくくなる。

本を読んでいて、ヒョイと目をあげるとぼんやりと見えていて、 ジッと見ていると、だんだんはっきりしてくる。

◯値札の金額を見間違えることがある。

◯パソコン画面を見ていると、すぐ目が疲れてしまう。

◯針に糸を通すなど、細かい作業が苦手になった。

こんな症状が起きてきます。

 

老眼鏡か遠近両用眼鏡を

 少し暗くなると本が読みにくくなるなど、暗くなると老眼が悪化したように感じるのは、どうしてでしょうか。暗い所ではカメラの絞りにあたる虹彩が光をより多く取り入れようと するために、瞳(瞳孔)が広がります。 瞳が広がると焦点深度が浅くなるので、老眼が悪化したように感じる のです。 本を読んだりする時は、手元を明るくして読むようにしましょう。手元が見えにくい状況が出て来たら、 そろそろ近用鏡(いわゆる老眼鏡)のお世話にならなければいけません。 手元が見えにくいのに無理をしていると、 目の疲れ、肩凝り、頭痛などの症状を引き起こすこともあるのです。

 もともと近視で眼鏡をかけている人は、遠近両用眼鏡に替えたとしても、 今は多焦点レンズの良いものが出ていますので、境目がなく ほかの人からは遠近両用眼鏡とわかりませんから、 スムーズに移行することができると思います。

 もともと遠視があり遠くが良く見えていた人は、近用鏡に抵抗があるようです。 遠視の方は、遠くを見る時にも、水晶体が若干厚くなってピンと合わせを する必要があるため、近くを見る時にはさらなる水晶体のピント合わせが 要求されます。 そのため、遠視の方は早いうちに手元が見えにくいという状況になります。 遠くの視力が良好でこれまで眼鏡をかけていなかったという人は 「目に自信がある」人が多く、近くを見る時だけに眼鏡を掛けると、 人より老けて見られるので嫌だという気持ちが強いようです。 でも、日常生活で近くを見る機会は非常に多く、無理をせず近用鏡を使うことによって、 「疲れがとれて楽になった」と感じることがあります。

 

遠近両用コンタクトレンズ

 コンタクトレンズが普及してから、年数も経過していますので、コンタクトレンズユーザーの中にも、老眼年齢に達している方々が増えてきています。そのニーズに応えるように遠近両用のコンタクトレンズが開発され、装用者が増えつつあります。遠近両用コンタクトレンズにも、ハードとソフトタイプの2種類のレンズがあります。遠近両用コンタクトレンズは、1枚のレンズの中に 遠くをよく見るための遠用部分と 近くをよく見るための近用部分が組み込まれています。それまで、ハードレンズを使っていた人は、もちろんハードの 遠近両用レンズがお勧めです。ソフトレンズを長期間使ってきた人の中には、 角膜内皮細胞が大きくなって、その数が減ってしまっている人も いますので、詳しい検査のうえ、使用可能か相談が必要な場合もあります。

 ハードレンズの遠近両用は、レンズの中央部分に遠用部分、その周りに近用部分があります。近くを見る時は視線が下を向きますので、相対的にレンズが若干上がることによって、レンズの中心をはずれた近用部分を通して見ることになります。この方式を交代視型といいます。遠近両用眼鏡と同じような仕組みになります。

 ソフトレンズの遠近両用は、同時視型といって、遠くと近く(場合によっては中間部分も)にピントがあう部分がレンズに組み込まれています。遠くと近くの両方にピントがあっているのですが、そのうちの注目している部分を脳が認識することになります。バックネット裏から野球を観戦している時に、ピッチャーに注目している時にはバックネットは気にならないし、バックネットに注目している時にはピッチャーがよく見えないといった感じです。

 現在、乱視用のソフトレンズを使用している方は、乱視の度数によっては、遠近両用ソフトレンズではスッキリ見えない場合があります。

 遠近両用コンタクトレンズにご興味のある方は、ぜひお近くの眼科専門医でご相談ください。

 

まずは眼科で検診を

 老眼かなと思ったら自己判断で済ませずに、眼科の検診を受けてください。眼科ではきちんと検査したうえで、老眼による視力低下であるとの診断をします。自分では老眼だろうと思っても、他の病気による視力低下が見つかることもあります。検査は怖くありませんので、一度お近くの眼科専門医を受診してくださいね。