飛蚊症
中心暗点
加齢黄斑変性
飛蚊症<2004.9.1発行 優しい眼科クリニック第10号から>
飛蚊症
眼科を受診されるきっかけとして、比較的多い「飛蚊症」(ひぶんしょう)についてのお話です。
セブン イレブン いい気分
コンビニエンスストアのセブンイレブンが旭川に出来始めた頃、テレビコマーシャルで軽快なメロディーの「セブン イレブン いい気分」が流れていましたよね。
突然、何の話?とお思いでしょうが・・・。飛蚊症の不快な症状を訴える患者さんのお話を伺っていますと、「嫌な気分」の訴え方にも、十人十色、色々あります。
・睫毛に何かついているみたいで、うっとおしい
・ススが飛んでいる
・カエルの卵みたいなものが動いている
・タバコの煙りの輪が飛んで見える
・フワフワした雲みたいなものが見える
・髪の毛みたいなものが動いている
・微生物みたい
・ゴマが見える
などなど・・・
皆さん、不快な症状を色んな言い方で教えて下さいます。そこで、やはり「飛蚊 ブンブン ヤな気分」とうことを実感しておりますが、飛蚊症の症状で来た患者さんの中には、重症な病気の方もいらっしゃいますので、しっかり目の奥まで見せていただかなければなりません。
飛蚊症は心配ないって聞いたけど
飛蚊症で受診される方のほとんどは、心配のないもの(病気ではないもの)なのですが、なかには網膜剥離や網膜剥離の原因となる網膜の穴が見つかる場合や、目の中の出血や、目の中の炎症など病的なものが原因となっている場合もあります。
飛蚊症には
心配ないもの:生理的飛蚊症
病気によるもの:病的飛蚊症
があるのです。
どうして飛蚊症が起きるのでしょうか
目はよくカメラに例えられます。カメラのボディは硬く頑丈に作られていますが、目は柔らかく、カメラのボディの中は空っぽですが、目の中には硝子体(しょうしたい)という生卵の白身のようなドロドロした透明な液体が詰まっています。この硝子体に濁りができますと、明るい所を見た時に、その濁りの影が目に底の網膜(カメラのフィルムの働き)にうつり、それを飛蚊症として感じるわけです。飛蚊症の原因は、硝子体の濁りなのですが、この濁りの原因が、病気によるものなのか、そうでないのかを鑑別することになります。
精密眼底検査
この鑑別には、瞳をひろげる必要があります。瞳をひろげる目薬を点眼し、30分くらいお待ちいただき、詳しく目の中の端っこまで、見せていただきます。検査自体は少しまぶしいくらいで、痛くない心配のない検査です。ただし検査後も3~4時間瞳がひろがっているため、見づらくなりますので、なるべくご自分で運転せずにお出でください。
生理的飛蚊症
精密眼底検査を受けていただき、目の中に病気が見つからなければ、その飛蚊症は心配なものではなく、生理的飛蚊症です。生理的飛蚊症の硝子体の濁りは年をとることによって生じた硝子体の変化によるものです。と、お話しますと、「年のせいですか・・・」と無意味にがっかりさせてしまう心配がありますので、「20歳を過ぎた頃から出てくるのですが・・・」と説明させていただいております。と言いますのも、20歳頃から飛蚊症を感じている自分が、「年のせい」とは思いたくないという気持ちの表れかもしれません。
病的飛蚊症
これは目に病気があって硝子体に濁りができるものです。飛蚊症が病気の初発症状になっているわけですから、見逃すことはできません。
1. 網膜裂孔・網膜剥離
神経の膜である網膜に穴があく病気です。穴があく時に飛蚊症、光視症(暗い所で光が見える症状)を伴うことがあります。早く見つければレーザー光線で穴の周りを焼き囲み、網膜剥離になることを防ぐことができます。見つけるのが遅れると網膜剥離となり、手術が必要となってしまいます。
2. 硝子体出血
出血の原因は網膜に穴があいた時、網膜の血管に病気のある時などです。糖尿病網膜症が悪化して、出血する場合もあります。
3. ぶどう膜炎
目に炎症の起きる病気に伴って、硝子体が濁る場合があります。
病的飛蚊症の場合は、それぞれに適切な治療が必要になります。
飛蚊症を自覚した日時がはっきりしている時、視力低下、かすみなどの症状を伴う時は、なるべく早く診察を受けに来て下さい。
中心暗点<ライナー健康相談 2003年12月12日 カルテ48「視界の不良」から>
Q:以前から視界の中心が暗く見えるようなことがあったのですが、しばらくするとよくなりました。仕事が忙しいときはひどくなるようですが、休みを取るとよくなっていたのでそれほど気にしていませんでした。最近は、物が小さく見えたり、少しゆがんで見えるようになり、仕事にも支障をきたすようになってきたのですが、このまま放置していてもよいものでしょうか?
(25歳・男・会社員/XYZ)
この相談を、ライナースタッフがこんの優眼科クリニックの今野優院長にお聞きしました。
A:ご相談の内容からは、目の奥にある神経の膜の中心部、網膜(もうまく)の黄斑部(おうはんぶ)という場所に病気が起きている可能性がありますので、ぜひ眼科を受診することをお勧めします。
私たちの目は、瞳から入った光が目の奥で像を結び、その像が神経を通って脳に伝えられることによって物が見える仕組みになっています。目の奥の一番内側にある神経の膜、すなわち網膜は、目をカメラに例えますとフィルムの役割を果たしています。
網膜はその場所によって感度が異なり、網膜の中心部分は感度が高く、もっとも重要な部分で黄斑部と呼ばれています。黄斑部は視力に関わりが深く、物が見えたり色を識別する細胞が集まっています。
ご相談にあります視界の中心が暗く見える「中心暗点」、物が小さく見える「小視症」、物がゆがんで見える「変視症」は、網膜の黄斑部に変化が生じたときに起こる症状です。眼科では視力検査を行い、網膜の状態を詳しく調べるために精密眼底検査を行います。
検査では目薬をさして瞳を開きます。そのためまぶしくなり、近くが見えにくい状態が3時間くらい続きますので、車の運転をせずに眼科を受診していただいた方がよろしいと思います。
「肝心なところが見えなくなる病気」<2015年グラフ旭川4月号市民の健康ガイドから>
「肝心なものは目には見えないんだよ」作家のサン=テグジュペリは「星の王子さま」の中で、私たちに大切なものは何かを教えてくれました。今回は肝心なものは目には見えない、といった メルヘンチックな話ではなく、 「見ようとするところが、見えづらくなる」加齢黄斑変性のお話をー。
網膜の中心にある黄斑
目の奥には網膜と呼ばれる神経の膜があり、カメラに例えると フィルムにあたります。 網膜はフィルムと違って場所によって感度に差があるのですが、 黄斑は網膜の中心部にあり、真ん中が少しへこんだ直径6ミリほどの領域で、一番感度の高い場所です。黄斑で物の形、大きさ、色などの情報の大半を識別しているといえます。
片目からやがて両目に
黄斑が異常に老化して起きる病気が加齢黄斑変性です。「滲出型」と「萎縮型」に分類され、滲出型は日本人に多くみられ、進行が速いタイプです。網膜の後ろにある脈絡膜から異常な新生血管が伸び、そこからの出血やしみ出た水分が黄斑部の視細胞を傷めます。その結果、見ようとする中心部分が見えづらくなり、ゆがんで 見えたり、小さく見えたり、まん中が暗くなったりという症状が 起きます。
症状は片目から始まりますが、やがて両目に及ぶ人が多く、失明の原因にもなります。片目に病気が起きても両目で見ると気付かないことがあります。 時々片目を隠して問題がないか自己チェックをお勧めします。例えば片目を隠し、カレンダーの日にちを区切る縦線、横線のゆがみや、見えにくい数字がないかなどのチェックが有用です。
最近増加傾向です
加齢黄斑変性は、アメリカでは成人の失明原因の第1位です。日本の第1位は緑内障ですが、食生活の欧米化、高齢者人口の増加のためか、患者数が増加してきています。2007年の推定患者数は約69万人といわれ、9年前に比べ倍増しています。なぜ起こるかの原因はまだはっきりと分かっていません。 網膜の老化現象と考えられていますが、長年にわたって光を見ることに関係しているのではないかと言われています。 また、喫煙、高血圧がこの病気を速める危険があると考えられています。女性より男性に多くみられます。
その診断方法は
診断は、網膜の下にある新生血管(脈絡膜新生血管)の部位、大きさなどから判断して治療方法を決定します。眼底検査のほか、眼底造影検査という腕の静脈から色素を注射し、色素が心臓から眼球に送り出されてくる状態を、眼底カメラで写真やビデオに記録することによって、 新生血管を捉えることができます。また、光干渉断層計で網膜、脈絡膜の断面像を捉えることができ、脈絡膜新生血管の部位、深さ、広がりを知ることができます。
新治療方法が次々と
治療の主流はレーザー光凝固でしたが、脈絡膜新生血管をつぶす時に 、同時に正常網膜にもダメージを与えてしまうために、黄斑のまん中 近くに新生血管がある場合は治療ができませんでした。04年に光線力学的療法(PDT)が認可され、光線過敏物質を注射によって体内に入れて 脈絡膜新生血管に集まった時を目掛けてレーザーを照射し、 新生血管だけをつぶすという方法です。09年に血管新生を止める薬物が認可され、4~6週おきに眼球に直接注射することで、視力回復効果も望めるようになりました。12年11月には2カ月ごとに注射する新薬も承認されました。しかし、重症の場合は黄斑の障害が残るため回復にも限界があります。
早期発見が最重要
加齢黄斑変性はノーベル医学生理学賞を受けた山中伸弥教授が開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)による初の臨床研究の対象に予定され、注目を浴びています。臨床研究は、他の治療法で効果がない重症の患者少数を対象に、安全性の確認から開始されました。
黄斑部のダメージが軽い早期に発見することによって、重症化を予防することが重要です。50歳以降の年1回の眼底検査によって、症状が出る前に起きる目の中の変化を見つけることができます。黄斑部に老廃物がたまることによってできる「ドルーゼン」が初期変化と考えられています。この段階なら、ビタミンA、C、Eと亜鉛が入ったサプリメントを摂ることで加齢黄斑変性になりにくいという報告があります。早期発見のために、片目での自己チェックをお勧めします。
こんの優眼科クリニックは
『患者さんに優しい眼科クリニック』をめざし、
常に『患者さんが自分だったら、自分の親だったら、自分の子供だったら』と考え、
診察させていただきます。
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