やさしい眼科通信

「北海道の国保」という冊子の「やさしい眼科通信」というコーナーを担当させていただくことになりました。平成234月号から、2年間にわたって計22回眼科についてのお話を掲載してもらいます。

2011.4.27 記

20114月号「目の検診の重要性」

20115月号「視力検査」

20116月号「眼科検査器械」

20117月号「診察室」

20118月号「赤ちゃんの目の病気」

20119月号「斜視」

201110月号「弱視」

2011年11月号「3歳児眼科健診」

2012年1月号「眼科学校健診」

2012年2月号「近視・仮性近視

2012年3月号「コンタクトレンズ」

2012年4月号「アレルギー性結膜炎」

2012年5月号「ウイルス性結膜炎」 

2012年6月号「飛蚊症

2012年7月号「ドライアイ」

2012年8月号「老眼」

2012年9月号「緑内障」

2012年10月号糖尿病網膜症」

2012年11月号白内障」

2013年1月号後発白内障」

2013年2月号加齢黄斑変性」

2013年3月号眼科の上手なかかり方


目の検診の重要性<やさしい眼科通信20114月号第1回>

 

眼科検診はなぜ大切なのでしょうか?

「目の検診を受けましょう」と聞いたことはあると思いますが、自覚症状がないとなかなか眼科を受診することはありませんよね。

 眼科の病気にはいろいろありますが意外と自覚症状がなかったり、目は2つあるために片方の目に病気があっても、自覚されにくいことがあり、眼科検診によって病気が見つかることも多いのです。転ばぬ先のつえとして、眼科検診を受けることをお勧めしています。

 

ものを見る仕組み

 目の働きや構造はよくカメラに例えられます。

 人の目を見た時に、黒目として認識される部分の表面には、角膜という透明な膜があります。角膜の後ろに透けて見えるいわゆる茶目は虹彩と呼ばれ、目の中に入ってくる光の量を調節する働きがあり、カメラの絞りに当たります。この虹彩の後ろに水晶体という透明な部分があります。水晶体はカメラのレンズと同じで、私たちが見ようとするものを正しく、網膜に焦点を結ばせる働きがあります。網膜に映った像が視神経を通して脳に伝えられ、私たちは初めてものを見ることができます。

 

眼科検診

 眼科検診でよく知られているものとして、3歳児検診、学校検診、人間ドックでの眼底検診があげられます。

 3歳児検診では、斜視も見つかることはありますが、見た目から親が先に気がつくことが多いものです。3歳児検診で見つけることができる病気に弱視があります。特に片眼の弱視(不同視弱視)は、他方の目の視力は良好ですので、見えにくそうにしているというそぶりがないため、3歳児検診で視力の項目が取り入れられる以前は、就学時検診で初めて見つかって治療がうまくいかないこともありました。

 学校検診では、子どもの視力低下を早期に見つけることができます。急に視力が落ちるわけではないので、視力が0.3を切っていても、案外、子どもは不自由ないと答えるものです。でも0.3を切っていると黒板の字は見えにくいはずですので、眼鏡も考えてもらいたいと思います。

 人間ドックでの眼底検診では、以前は高血圧の変化、動脈硬化の変化を見ることが目的でした。最近では、日本人には緑内障の患者が多いことが判明し、眼科医が判定する人間ドックの眼底写真の視神経の変化から見つかることが増えています。緑内障は進行するまで自覚症状の出ない病気で、逆に自覚症状が出た時には、かなり進行していることが多い病気です。

 

眼科で行われる検査

 眼科では、視力検査、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査を行います。

 視力検査は、裸眼視力(そのままの状態でどれくらい見えるか)、眼鏡視力(ご自分の眼鏡でどれくらい見えているか)、矯正視力(一番ピントがあった眼鏡をかけた状態でどこまで見えるか)の検査を行います。

 眼圧検査は、目の硬さを測るものです。緑内障は40歳以上の17人に1人くらいの割合で発症することが明らかになりましたが、自覚症状が少ないために、その内の8090%の方は眼科を受診していないといわれています。

 細隙灯顕微鏡検査は、診察室で行われる検査で、目の表面から目の奥まで直接観察し、必要によって色素やレンズを使って、目に病気がないかを詳しく調べる検査です。

 眼底検査は人間ドックの眼底検査より詳しく見るために、目薬を入れて瞳を広げて検査する方法があります。この目薬の検査を受ける場合は、4.5時間まぶしくなりますので、すぐには車の運転は避けてもらいたいと思います。もちろん後日改めて検査を受けることもできますので、相談してほしいと思います。

 眼科で行われる検査は、どの検査も痛みを伴う検査ではありません。少しまぶしいと感じることはあるかとは思いますが、基本的には怖い検査ではありませんので、おっくうがらずにぜひ、眼科検診を受けることをお勧めします。


視力検査<やさしい眼科通信20115月号第2回>  

 

眼科で視力検査を受けましょう

 眼科と聞いて最初に思い浮かぶものと言ったら何でしょうか。視力検査のCのようなマークを思い出す方が多いのではないでしょうか。眼科で担当する病気は、目の外側の瞼や目の表面の白目である結膜から、目の中の神経の膜である網膜、さらに眼球の後ろの視神経から脳まで、広い範囲に及びます。眼科の病気には意外と自覚症状がなかったり、片方の目に病気があっても自覚されにくいことがあり、受診することで病気が見つかることも多いのです。

 今回は眼科の基本検査ですが、一番重要と考えられる視力検査についてお話します。

 

目の構造と働き

 目の働きや構造はよくカメラに例えられます。今のところは、「目の奥にもカメラと同じようにフィルムがあって、そこに像を結びます」というふうなお話でご理解いただけていますが、デジタルカメラが当たり前の時代になってきていますから、その説明の方法も考え直さなければならない時が来るのかもしれません。

 人の目を見た時に、黒目の表面に角膜という透明な膜があります。角膜の後ろに透けて見えるいわゆる茶目は虹彩と呼ばれ、目の中に入ってくる光の量を調節する働きがありま、明るい所、暗い所では虹彩が動き、瞳の大きさを変えるので、カメラの絞りに当たります。虹彩の後ろの水晶体はカメラのレンズと同じで、私たちが見ようとするものを正しく、網膜に焦点を結ばせる働きがあります。カメラではレンズが前後に動きますが、水晶体はその厚みを変えることによってピントを合わせてくれています。網膜に映った像が視神経を通して脳に伝えられ、私たちは初めてものを見ることができます。

 目の奥には網膜と呼ばれる神経の膜があります。カメラのフィルムに当たりますが、フィルムと違って網膜は場所によって感度が違っています。網膜の一番底の真ん中にあたる黄斑という場所が、一番感度が高くなっています。

 

視力検査の C について

 視力検査で使われているアルファベットのCのようなマーク。このマークは『ランドルト環』という名前がついています。ランドルトは、19世紀後半から20世紀初頭のフランスの眼科医の名前です。Cの輪の切れ目の方向を答えてもらうことによって、視力を測定します。

 少し難しい話になりますが、視力は確認できる最小視角の逆数で表されます。算数で教わる角度の単位は、度までですが、1度の60分の1の角度を1分といいます。その1分の視角を確認できる能力を、視力1.0といいます。例えば、確認できる最小視角が2分なら、視力は1÷20.510分なら1÷100.1ということになります。

 通常の視力表の場合、視力検査は5メートル離れて行います。視力表で1.0に該当するランドルト環は、高さ7.5ミリ、文字の太さ1.5ミリ、文字の切れ目部分の幅1.5ミリです。この文字の切れ目部分の幅1.5ミリが、5メートル離れたところからの視角1分に相当します。ちなみに、視力0.5のランドルト環の大きさは1.0の2倍、0.25倍、0.110倍の大きさです。

 視力検査で一番上のランドルト環の向きがわからない時は、視力表に近づいて測定することになります。もし4メートルまで近寄って0.1のランドルト環の向きがわかれば視力は0.083メートルでわかれば0.06ということになります。

 

♪視力が良いとか悪いとか 人は時々口にするけど

 よく「私は目が悪いから」とか「俺は目は良いんだ」という話がありますが、一般に目が良い悪いは、裸眼視力の良し悪しで判断されているようです。

 眼科での視力検査は、裸眼視力、眼鏡視力、矯正視力の検査を行います。さらに中年以降の方では、近くを見る力を調べる近方視力検査を行うことがあります。

 眼科医の考える視力の良し悪しは、一番ピントがあった眼鏡をかけた状態でどこまで見えるかを調べた結果の矯正視力で判断することになります。裸眼視力は、その数値が低くても医学的な異常ではないこともありますが、矯正視力が0.9以下の場合は、病気が隠されていないかどうか、さらに詳しい検査が必要になってきます。視力はあくまでも、どれくらいの近さの二つの点が離れているかを判断する能力をみるものですから、例えば像の暗さ、歪みなどの見え方の質までを評価しているわけではありません。しかし、視力検査は眼科検査の基本になるものであり、一番重要な検査だといえます。

 視力は、見えるか見えないかを答えてもらうことによって検査します。その日の体調などによっても変動することがあります。裸眼視力の数字だけに一喜一憂するのではなく、眼科で矯正視力と屈折状態を正確に調べる検査を受けることをお勧めしています。


眼科検査器械 <やさしい眼科通信20116月号第3回>  

 

精密検査を受けましょう

 眼科診療の特色って何でしょうか。皆さんの考える特色と、私の考える特色に違いがあるかもしれませんが。私の考える特色は、検査が多い、診察室が暗くなる、診察がまぶしい、ということでしょうか。

 眼科に診察を受けに行くと、診察の前に視力、屈折、眼圧などの検査があり、時間を要してしまうという印象があると思います。もちろん、「はやり目」のような感染性疾患が疑われる時は、検査をせずにすぐに診察する場合もあります。そこで今回は数多い眼科検査器械についてお話しします。

 

眼科の検査器械あれこれ

1)オートレフラクト・ケラトメータ

 オートレフラクトメータは近視、遠視、乱視などの目の度数を測ります。のぞくと牧場の家や気球などの指標が見えますので、ぼんやりとその指標を見ていていただきます。

 オートケラトメータは角膜(黒目の表面の膜)のカーブを測ります。乱視の主な原因は角膜のカーブのゆがみです。コンタクトレンズ処方の際には必ずこの機械で検査し、白内障手術の術前検査として、目の中に入れる眼内レンズの度数を決定する際にも使います。

 これらの検査は痛くもまぶしくもないのでご安心ください。

2)ノンコンタクト・トノメータ

 これは眼圧といって、目の硬さを測ります。目の表面にピュッという空気が当たります。初めての時は、少しビックリされることがありますが、決して痛い検査ではありませんので、ご安心ください。患者さんの中には 「空気銃で撃たれる検査は怖いから、受けたくない」と言われる方もいますが、最近の器械は以前のものより空気銃の威力が落ちていると思います。確かに空気が「いつ出るか、いつ出るか」と思うと嫌な気分になることは分かります。眼圧を測って、緑内障がないか調べます。緑内障は、自覚症状がなく、視野がかなり狭くなるまで気付かない病気ですので、早期発見が重要になります。

3)角膜内皮細胞検査

 コンタクトレンズ希望の方、目の手術を受ける(受けた)方には、角膜内皮細胞検査を行います。角膜内皮細胞は、角膜の透明性を保つために重要な働きをしています。加齢と共にともに減少することは避けられませんが、コンタクトレンズの誤った使用や、目の手術によっても減少し、減少した細胞は再生しません。コンタクトレンズで細胞を減らさないように、正しいフィッティングのレンズで、かつ酸素透過性の優れたレンズを正しい使用法で装用しなければなりません。また白内障手術で角膜内皮細胞を減らさないように、目に優しい白内障手術を心がけています。

4)視野検査

 緑内障の診断と経過観察には、精密な視野検査が欠かせません。目の神経が傷害されて、見える範囲が知らないうちに狭くなってくる病気が緑内障です。40歳以上の方の17人に1人は緑内障と考えられています。クラス会をやったら、クラスに2人は緑内障の人がいる確率になります。視野検査は自覚検査なので、検査時間が長くなると、疲れて集中できず、検査結果があてにならなくなる心配があります。検査時間はを短く、しかし必要な部位の検査は確実に行う必要があります。最近の自動視野検査器械は短時間に緑内障の初期変化を見つけ出すことができるように設計されています。

5)眼底カメラ

 眼底カメラにはカラー写真を撮るものから蛍光写真を撮るものまであります。眼底を客観的に記録するだけでなく、診断的価値も高いものです。撮影部位や撮影倍率を変えることによって目的の部位を確実に撮影することが可能です。

6)超音波検査

 超音波の性質を利用して目の奥行きを測るAモードは、白内障手術時に挿入する眼内レンズの度数を決めるために使います。Bモードは眼底が見えないときに眼内の状況把握に有用な情報を与えてくれます。

7)光干渉断層計

 OCT と呼ばれ、今まで捉えることのできなかった眼底の断層像を撮影することができるようになりました。近年増加傾向にある加齢黄斑変性、黄斑円孔の診断、さらに緑内障の診断にも応用されるようになってきています。

8)網膜電位図

 光刺激に対する網膜の電気反応を記録する器械です。網膜の他覚的検査として、網膜のどの層に機能異常があるのかを推測できます。

9)ヘススクリーン

 自覚的な眼位ずれを記録する検査で、眼球の動きと複視の状態を検査することができます。

 

 眼科クリニックではいろいろな検査器械があり、これらから得られる客観的な結果と、患者さんの主観的な症状の話を聞き、目の表面と場合によっては目の奥までみて診断をつけ、治療します。検査器械から得られる結果は非常に重要ですし、信頼できる結果が得られるように、注意深く検査します。検査器械はどれも重量があり固定して使用していますので、皆さんに次々と椅子を移っていただく面倒をお掛けしますが、どうぞご容赦ください。


診察室 <やさしい眼科通信20117月号第4回>  

 

診察室で受ける検査について

 前回、数多い眼科の検査器械についてお話させていただきましたので、今回は暗くなる診察室の中で受けるまぶしい検査について説明します。

 

細隙灯顕微鏡検査 

 まず最初に、これは細隙灯顕微鏡で写した右目の写真です。

 瞳を大きくする目薬を入れた後に撮りましたので、瞳(瞳孔)が大きく広がっています。細隙灯という細い光を左側から照らしていますので、C のような光の筋となっているのが、透明な角膜からの反射です。瞳の中にピント合わせの働きをしてくれているレンズ(水晶体)が見えます。この水晶体が白く濁ってくるのが白内障です。

 細隙灯顕微鏡検査では、観察倍率や焦点を合わせる部位を変えることによって、まぶた(眼瞼・マイボーム腺・涙点)、まつ毛(睫毛)、黒目(角膜・前房・水晶体)、茶目(虹彩)、白目(結膜・強膜)だけでなく、検査用レンズを使うと目の奥(硝子体・網膜・視神経)までを立体的に診察することができます。

 この検査は眼科の検査の中でも非常に重要なもので、通常、診察の都度行われます。内科医にとっての聴診器のように、細隙灯顕微鏡は眼科医には大切な検査器械です。

 

細隙灯顕微鏡検査のオプション検査

1)生体染色顕微鏡検査

 異物が入ったり、逆さまつげが当たったり、涙の量が減っているドライアイという病気によって、黒目の表面の角膜に傷がつくことがあります。角膜は身体の中でも最も敏感な部位と考えられ、少しの傷でも強い痛みを生じます。透明な角膜についた小さな傷は、色素をつけ、特殊なフィルターを通して観察することによって、見落とすことはありません。また、ドライアイでは涙の量が減っているだけでなく、涙が蒸発しやすい状態になる質の異常を伴うことがあります。角膜を染めた後、瞬きを我慢してもらい、涙の表面の膜(涙膜)が破れる時間を計ることによって、涙の質を定量的に判断することもできるのです。

2)ゴールドマン眼圧計

 点眼麻酔をした後、細隙灯顕微鏡に付属した器械を直接角膜に触れさせることによって、目の硬さ(眼圧)を測定することができます。

3)隅角検査

 前房と呼ばれる角膜と虹彩?水晶体で囲まれる目の中のスペースが狭い場合、また緑内障と診断した場合は、特殊なコンタクトレンズを目に装着し、目の中で房水(眼内組織に栄養を運搬する液体)が流れ出て行く経路が開いているか、つまっているかを検査することや、その部位の異常がないかを調べることが可能です。

 

細隙灯顕微鏡検査の上手な受け方

 患者さんは器械の前に座り、あごを台に載せ額を固定します。多少まぶしい感じはありますが、額を離さないよう軽く前のめりになる感じで、まっすぐ見ていただきたいと思います。その後、診たい方向に目を動かすように指示がでますので、指示に従って目だけを動かしてください。それほど長い時間はかからないと思います。

 

眼底検査

 これは、眼底カメラで写した右目の眼底写真です。

 丸くお月様のように見えるのが、視神経乳頭と言って、目の神経が脳へと伝わっていく出口です。その中を通って、心臓から目に血液を送る動脈(細いほうの血管)と、帰り道の静脈(太いほうの血管)が走っています。中央の少し暗く見える部分が、黄斑と言って視力にかかわる最も重要なところです。

 手持ち式検眼鏡もしくは額帯式検眼鏡と集光レンズを用いる倒像眼底検査が一般的です。そのままの状態でも眼底検査することは可能ですが、瞳を開く目薬をさして30分ほどしてから行う精密眼底検査では、網膜の端まで観察することができます。目の前に黒いものが飛んでいるように見える飛蚊症のときなどは、精密眼底検査が必要です。

 眼底検査により、硝子体混濁の検出、視神経乳頭の評価、黄斑部を含んだ網膜および血管の変化の検索が可能です。

眼底検査の上手な受け方

 検査自体は少しまぶしいくらいで、痛くない検査です。 目の中を360度端まで診るためには、患者さんに目を動かしてもらう必要があります。この時も顔は動かさずに目だけを指示の通りに動かしてください。目薬をさした場合は、検査後も34時間瞳がひろがっているため、見づらくなりますので、なるべく自分で運転せずに来院してください。

  検査室で行われる細隙灯顕微鏡検査と眼底検査は、眼科の基本診察です。怖くない検査ですので、安心して検査を受けてください。


赤ちゃんの目の病気<やさしい眼科通信20118月号第5回>

 

長引く目やにには要注意

 先月号まで、眼科の検査についてお話させていただきましたので、これからは目の病気について説明します。目の病気は色々ありますので、赤ちゃんから高齢の方まで、眼科には幅広い年齢層の患者さんが受診に訪れます。そこで、まず赤ちゃんによくみられる病気についてのお話を。

 

赤ちゃんの目やに

 赤ちゃんの目で、最初に気になることが多いのは目やにだと思います。目やにの多くは、一時的なもので心配のないことが多いのですが、片目だけ目やにが多く、またなかなか治らない場合は、先天性鼻涙管閉塞症による新生児涙嚢炎が疑われます。

 

涙の通り道について

 先天性鼻涙管閉塞症の説明の前に、涙の通り道についてお話させていただきます。

 涙は上まぶたの外側にある涙腺(るいせん)という場所で作られます。分泌された涙は目の表面を濡らした後、目頭の上下にある小さな穴(涙点)に吸い込まれ、細い管(涙小管)を通って涙嚢(るいのう)と呼ばれる涙のふくろにたまり、さらに鼻涙管を通って、鼻の奥に抜けていきます。これを涙の道、涙道といいます。

 

先天性鼻涙管閉塞症

 赤ちゃんの鼻涙管の出口に生まれつき膜が張っていることが、先天性鼻涙管閉塞症の原因です。膜のために、涙が鼻の奥に抜けないので、涙目になります。また、涙の流れも滞りますので、そこにばい菌が繁殖し、目やにが出るようになります。

 まずはお母さんに、涙嚢部マッサージとばい菌止めの目薬を指導します。軽く目頭の下の涙嚢部をマッサージすることによって、そこにたまっている涙と目やにを押し出してから、ばい菌止めの目薬をさします。生後7ヵ月くらいまでは、この治療で様子を見るようにしています。それでも症状が治らない場合は、鼻涙管開放術といってブジーと呼ばれる細い棒を涙道に通して、膜を破る治療を行うことになります。

 マッサージと点眼で自然に治る場合があること、7ヵ月以上になってしまうと、赤ちゃんを抑えて処置することが難しいこと、7ヵ月くらいまでは、感染に対する抵抗力が弱いので早期の手術はお勧めできないことが7ヵ月まで待つ理由です。

 しかし、赤ちゃんによって体の大きさが異なりますので、体格のよい赤ちゃんの場合は、抑えることが出来るうちにと考えて、生後6ヵ月で手術を行う場合もあります。これは、抑えられない場合は全身麻酔で行わなければならないことになってしまうので、それであれば、早めにと考えて行う場合があるということになります。

 

下眼瞼睫毛内反症

 赤ちゃんの下まぶたのまつ毛は、黒目に触っていることがよくあります。赤ちゃんの顔はぽっちゃりしていて、まぶたが膨らんでいることが多いので、まつ毛が黒目に触りやすいのです。幸いに赤ちゃんのまつ毛は、とても柔らかいので黒目に触っていても、特に問題を起こさないことが多いのです。また成長とともに、まつ毛は次第に外をむいて来て、黒目に触れなくなってきます。多くは45歳になって顔が引き締まってくるにつれて、自然に治ってくることが多いのです。まつ毛が黒目に当たることによって傷がつくと、目やにがでたり、涙目になったり、白目が赤くなったり、外に出るとまぶしがったりするような症状を起こします。目薬を使っても症状を繰り返したり、45歳を過ぎても全く治らない場合は、全身麻酔での手術を相談することになります。

 赤ちゃんの目やには、結膜炎が原因のことが最も多いのですが、先天性鼻涙管閉塞症や下眼瞼内反症が原因で、なかなか自然には治らないこともあります。ただの目やにと考えずに、長引いたり繰り返したりする時は、眼科に連れて来てください。


斜視<やさしい眼科通信20119月号第6回>

 

お子さんの目の向きがおかしいと思ったら

 お子さんの目の向きがおかしいと思ったら、斜視の可能性があります。私たちは、左右の目でものをまっすぐとらえることによって、立体感や遠近感をつかむことができます。もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんの視力はとても弱いので、思いがけない目の動きをすることもあります。でも、目の向きがおかしいと思ったら、眼科に連れて来てください。

 

赤ちゃんの目の機能の発達

 生まれたばかりの赤ちゃんは、光が分かるくらいで、あまり良く見えていないと言われています。生後1カ月で目の前の手が動くのがわかるようになります。6カ月で0.04から0.08くらい、1歳で0.3くらい、3歳で1.0が見えるようになっていると考えられています。

 視力と一緒に両眼視機能も発達してきます。両眼視とは、左右の目でとらえた像を、脳で一つの情報にまとめて受け取る働きのことで、立体感や遠近感は、この働きによって得られます。両眼視機能も3歳くらいで完成すると考えられています。人の目は、生まれつき視機能が備わっているのではなく、乳幼児期にピントのしっかりあった像を両方の目で同時に見ることによって、順調に発達してくれるのです。

 

斜視とは

 斜視は左右の目の視線がそろわずに、片方の目が別の方向を向いてしまう状態で、子どもの約2%に見られます。目の位置によって、上下内外の斜視に分類されます。

 片方の目が真っすぐ向いている時に、他方の目が内側に寄っているのを内斜視、外側に寄っているのを外斜視、上(または下)に寄っている場合を上(下)斜視と言います。

 

内斜視とは

 生まれたての赤ちゃんにみられる内斜視が、乳児内斜視で、片方の目がかなり内側に寄っている場合が多く、外側に動きにくいのではないかと思われることもあります。乳児内斜視は両眼視機能の発達の妨げになることがわかっており、早期手術の適応になると考えられます。

 赤ちゃんの顔は、鼻の付け根の部分が十分に発達していないため、鼻側の白目が外からは見えずに、見かけ上、内斜視にみえる偽内斜視ということがあります。内斜視なのか偽内斜視なのかを見極めるためには、顔にライトをあてて、そのライトの反射が角膜の中央の瞳に両方とも当たっているかどうかで判断します。

 赤ちゃんが診察室で機嫌良く、ライトを見てくれないこともありますので、内斜視が心配な親御さんは、家庭でフラッシュをつけて顔の正面からの写真を撮って、持って来ていただければ判断の参考になります。

 1歳くらいからみられるようになる内斜視に調節性内斜視があります。視力が出て来て、ものを良く見ようとする時期に、強い遠視があるためにピントを合わせる力を働かせるために内斜視が生じるものです。調節性内斜視の治療は、しっかりとあった遠視の眼鏡をかけることです。強い遠視は治すことはできませんが、眼鏡で内斜視は治すことができ、視力、両眼視機能も正常に発達することが期待できます。

 

外斜視とは

 間欠性外斜視は、普段は外斜視ではないのに、疲れたとき、眠たいとき、ボーっとしている時に外斜視になるもので、斜視の中で最も多いタイプです。外に出た時に片目つぶりをすることもあります。普段は左右の目で同時に見ることができていますので、弱視になる心配はありません。外斜視になる頻度や時間が多くなったり、真っすぐにするのに目の疲れが気になる時には、手術を考えてもらうことになります。

 常にどちらかの目が外に寄っているのを恒常性外斜視といいます。治療は手術ですが、手術によってものがダブって見える複視が起こる場合があるので、注意が必要です。

 

上(下)斜視とは

 上下の斜視は下斜筋過動、上斜筋麻痺などが原因で起きることもあり、眼性斜頸といって首を傾げる原因になることもあります。また、他の斜視に合併していることもありますので、眼科で詳しい検査を受けてください。

 

 斜視を放置しておくと、弱視という別の病気を引き起こす原因となることがあります。これは専門的な検査をうけないと判明しません。最初の手がかりは、左右の目の位置関係がまっすぐか、たまにどちらかにはずれることはないか、を注意してあげることです。

 正面の顔の写真を何枚か撮っておくと診察のうえでも参考になりますので持ってきていただけるといいと思います。また、普段は真っすぐで、時々はずれるという場合も写真とか最近はビデオなどの動画を持って来てくれる親御さんもいらっしゃいます。目の向きがおかしいと思ったらぜひ、眼科に連れて来てください。


弱視<やさしい眼科通信201110月号第7回>

 

治療で治すことができる弱視

 お子さんの目の病気に『弱視』があります。弱い視力と書きますので、弱視と診断されてしまうと心細くなってしまうかもしれません。でも、治療で治すことができるのです。

 

2つの弱視

 弱視という言葉には二つの意味があり、一つが「医学的弱視」、もう一つが「社会的弱視」です。

 眼科で弱視と言うと「医学的弱視」のことなのですが、 親御さんは「社会的弱視」と受け取って、行き違いが起こってしまうことがあり、言葉足らずを反省することがあります。

 「医学的弱視」とは、網膜や視神経に異常がないにもかかわらず、視力の成長期において、角膜から網膜の前までに何らかの異常があり、視力の発達が妨げられて、良い視力が得られないことをいいます。

 一方、「社会的弱視」とは、原因を問わず両眼での矯正視力(一番ピントの合っている眼鏡をかけた視力)が0.040.3に低下していたり、視野が極端に狭くなっている状態のことです。

 「医学的弱視」は、適切な時期に適切な治療をすると 治すことのできる弱視なのです。

 

どうして弱視に

 生まれたばかりの赤ちゃんは、光が分かるくらいで、あまり良く見えていないと言われています。生まれつき視力が備わっているわけではなく、乳幼児期からものを見て、網膜にピントのあった像を結ぶ刺激を繰り返すうちに視力を獲得することができるわけです。この視力の発育に重要な時期に、何らかの原因があり、視力の発達が途中で止まってしまい、眼鏡をかけても視力が出ない状態を弱視といいます。

 私は弱視の説明の時、『お子さんの目にまだ、スイッチが入っていない状態です』と伝えています。赤ちゃんの目は、作りは問題なくても働きの点から考えると、 未完成品です。赤ちゃんの目にしっかりとピントのあった像を結ぶことが、目の働きにスイッチを入れるというイメージです。目の働きにスイッチが入って、初めて目が完成するわけです。

 

弱視の種類

 弱視の種類は大きく4つに分けられます。

屈折異常弱視

   強い遠視、乱視のために目にしっかりとピントのあった像を結ぶことができない。

不同視弱視

   左右の目の度数に差が大きい場合、度数の強い方の目にピントのあった像を結ぶことができない。

斜視弱視

   斜視のために、視線がずれてしまう方の目にピントのあった像を結ぶことができない。

形態覚遮断弱視

   先天白内障、眼瞼下垂などの病気が原因となり、目にピントの合った像を結ぶことができない(眼帯をしたことが原因のものも含む)。

 弱視のうち、不同視弱視の発見が遅れることが多く見られます。見た目には何の異常もありませんし、片方の目の視力が良いので、お子さんの行動から発見されることが少ないのです。以前は就学時検診で初めて弱視が発見されることが多く、 治療が上手く行かない場合もありました。平成210月から3歳時健診に視力検査が加わりましたので、平成生まれのお子さんは、3歳時健診で視力検査をご自宅で行うようになりました。それでも、小学校に入ってから、弱視が発見されるお子さんもいます。3歳になりましたら、ほとんどのお子さんの視力検査ができます。心配でしたら、ぜひ、ご相談ください。

 

弱視の治療

 67歳くらいまでに、ほぼ大人の視力になると考えられていますので、その前に治療を行うことが効果的です。3歳から治療した不同視弱視では、1年で75%が矯正視力0.7以上に回復するというデータが発表されています。一方、入学後に治療を開始した場合は、長い治療期間が必要になってしまうこともあります。しかし、成長に個人差があるように治療効果にも個人差がありますので、あきらめずに頑張って治療を受けていただいております。入学後から治療を始める場合は、本人が治療の必要性を自覚できることから、積極的に取り組めるという利点もあります。

 屈折異常弱視、不同視弱視の場合は、眼鏡をかけてもらうことが、治療の第一段階です。眼鏡をかけて、しっかりとピントのあった像を結ぶことが大切です。でも、この時点ではピントの合った像を結ばせても、本人ははっきり見えません。近視の眼鏡と違って、かけた時点でははっきり見える眼鏡ではないのです。 頑張って眼鏡をかけているうちに目にスイッチが入って徐々に視力が上がってきます。

 不同視弱視の場合は、眼鏡に十分慣れた上で、「健眼遮蔽法」を行うことがあります。これは、良い方の目にアイパッチをして、弱視眼のみを使ってもらう訓練です。良い方の目の視力が落ちていないことを確認しながら弱視眼の視力が伸びてくるのを待つわけです。弱視の治療はすぐに結果が出るわけではなく、 ご本人、親御さんの根気と協力が必要です。


3歳児眼科健診<やさしい眼科通信201111月号第8回>

 

最も低年齢で行われる検査

 乳幼児期における正常な視機能発達を達成するためには、それを阻害する可能性のある因子を早期に発見し、早期に適切な対処を行なうことが重要です。平成3年に、母子保健法の定めるところにより、3歳児眼科健康診査事業が都道府県を実施主体に行なわれるようになり、平成9年以降は実施主体が都道府県から市町村に移管されました。

 

目標は早期発見

 3歳児眼科健診の第一の目標は、視覚障害の早期発見です。その中でも弱視の検出が重要です。近年の研究で明らかにされている弱視の80%以上は、不同視弱視と屈折性弱視であることから、早期に視力検査を行なって対応することが必要です。弱視の治療はできるだけ低年齢期に発見し、治療を開始することが良好な治療効果につながると考えられています。

 

視力検査を行う意義

 視力の発達する期間に、目にピントが合っていない状態などがあると、視力の発達が妨げられてしまった弱視になってしまいます。弱視の治療には主にメガネを用いて、ピントが合った状態にすることで、視力の発達を助けます。大切なことは、早く発見して早く治療を始めることで、自覚的、他覚的に検査が可能な最も低年齢と考えられる3歳児で発見することに意義があります。

 高度な両眼弱視では、日常生活に不自由をきたし、その子どもの行動などによって保護者が気付きますが、問題になるのは片眼の弱視です。片眼弱視の子どもは、一般的に不自由を訴えませんし、行動にもほとんど現れませんので、保護者も気付くことがほとんどありません。しかし、片眼弱視は、正常な両眼視ができませんので、視力を正常またはそれに近い状態まで上昇させておかないと一生正しい両眼視機能を得ることができなくなります。

 3歳児眼科健診が行なわれる前は、片眼弱視は就学前検診に発見されることが多かったので治療効果が悪い上に、学業を始める時期に治療を行なうので、子どもたちに大きな負担をかけていました。3歳児で発見されるようになり、就学までに治療効果が上がるようになってきています。

 

健診の方法

 3歳児健診は、一次健診は家庭、二次健診は市町村保健センター、学校、公民館など、三次健診は眼科医療機関などで行なわれます。

 一次健診は視力検査とアンケート調査によるスクリーニングが目的です。自宅に絵視標の視力検査表が郵送されますので指示に従って、お子さんの視力検査をしてください。検査は最初、両目で絵視標を理解しているかどうかを確認した後、片目をふさいで検査します。片目をふさぐ時は、左右どちらか嫌がらない方の目から、先にふさいで検査を行ないます。片目をふさぐことを嫌がった場合は、ふさがれていない方の目の視力が悪いことがありますので、二次健診の時にそのことを伝えてください。

 入園時や就学時に初めて視力不良を指摘されたお子さんの保護者の方に3歳児健診について尋ねてみますと、「受診していない」「視力検査はしなかった」「うまくできなかったが、ふざけていると思った」「生活態度に変わったことがなかったので、見えていると思った」といった答えが多いようです。うちの子は大丈夫と思っても、また忙しくても面倒がらずに、ぜひ自宅で視力検査をしてみてください。 視力検査が上手にできなかった時は、二次健診の時に申告して再検査を希望していただくことをお勧めします。

 アンケート調査は、「目つきがおかしいですか」「まぶしがりますか」「目を細めて見ますか」「物に近付いてみますか」「頭を傾けたり横目でみたりしますか」といった質問に答えていただきます。

 自宅の検査で片目ずつ絵視標が答えられなかった場合や視力検査ができなかった場合、アンケート調査で一つでも「はい」の記載があった場合は、二次健診で再検査を行ないます。

 二次健診で片目ずつ絵視標が答えられなかった場合、眼位異常、その他眼疾が疑われ精密検査を要すると認めた場合、努力しても視力検査ができなかった場合には、三次健診として眼科医療機関に紹介されます。

 

健診の実績

 日本眼科医会の調査によると、二次健診受診者は、3歳児眼科健診対象者の6265%にとどまっているようです。しかしながら、3次検診における異常発見率は50%以上の実績がありますので、3歳児健診を受けることによって、屈折異常、斜位および斜視、屈折異常弱視・不同視弱視、斜視弱視だけでなく眼球震盪症、眼瞼下垂、強膜疾患、水晶体疾患、眼底疾患が見つかっていると報告されています。

 乳幼児は、見え方に異常があったとしても、自ら訴えることはできません。3歳児眼科健診は、そのためのよいチャンスです。3歳児健診の書類が送られてきましたら、まずはお子さんと一緒に視力検査をしてみてくださいね。


眼科学校健診<やさしい眼科通信20121月号第9回>

 

370方式の視力検査

 人気テレビ番組「踊る!さんま御殿!!」で「世代間ギャップを痛感した時」というテーマが取り上げられ、40代の上司が、「子どもの時、学校健診の視力検査で0.2だった」という話をしたところ、それを聞いた20代の後輩に「私はCでした」と言われ、「??」だったということが紹介されていました。学校健診の視力結果は、世代間ギャップになっているのですね。

 

眼科学校健診

 昭和33年に学校保健法が公布され、その後何度か改正されながら、現在に至っています。眼科に関する定期健康診断は「視力検査」「眼の疾病および異常の有無」の2項目について行なうことになっています。このうち視力検査は、眼科学校医自らが行なう眼科健診に先立って通常実施されており、保健調査とともに眼科健診の予診的検査として位置づけられています。したがって、眼科健診では「眼の疾病および異常の有無」のほか、保健調査や視力検査の結果にも注意を払いながら、必要に応じて積極的に児童生徒へ助言や指導を行なうことになります。

 

370方式とは

 学校保健法施行規則の一部が改正され、平成441日から視力検査は、「1.0」「0.7」「0.3」の3指標で判定してよいことになりました。視力の検査結果が1.0以上であるときは(A)、1.0未満0.7以上であるときは(B)、0.7未満0.3以上であるときは(C)、0.3未満であるときは(D)、と記入してもよいことになりました。

 

370方式採用の理由

 3つの指標のみで視力検査を行なうことになった理由は、次の5つが挙げられます。

 1. 学校の視力検査の目的は、黒板の字がきちんと見えているか、学業にさしつかえないか、眼科学校医の診断・指導が必要かどうかを判断するために行なわれます。

判断の基準としては

 視力0.3=教室の最前列でもこれ以下の視力では黒板の字が見えにくい

 視力0.7=教室のどこからでも黒板の字が一応見える最低視力

 視力1.0=一応健常視力

が用いられます。

 2. 370方式は授業にさしつかえないかをみる目的に適しており、指導も行ないやすい。

 3. 視力測定が能率よく行なえる。

 4. 視力の細かい変動に子どもたちがこだわらなくなる。

 5. 普通免許の視力基準も片目0.3以上、両目で0.7以上となっているように、社会的にも日本では0.30.7が重視されています。

子どもの視力の揺らぎ

 学童の視力は変動が大きく、いつも一定した値を得ることが難しいと言えます。一度の視力検査の結果が悪かったとしても、その日の体調、目の疲れ具合などによって、視力は変動します。 特に学校検診の時の、みんなが一列に並んで騒がしいような中で検査した場合には、内気な子は視力が悪く出ることもあります。また、少し目を細めただけで視力はすごく上がります。視力の良い子どもの視力は安定していることが多いのですが、視力低下が始まった時期の子どもの視力は特に揺らぎがみられます。学校現場では条件の違いもあり、0.1きざみで細かく測ることはあまり意味がありません。学校検診の結果のみで一喜一憂せずに、視力低下を指摘された場合は、眼科での再検査をお勧めします。

 

眼の疾病および異常の有無

 眼科健診では、保健調査や視力検査の結果をふまえて以下の項目をチェックしています。

1. 眼位のチェック:カバーテスト、カバーアンカバーテスト、交代カバーテストにより、斜位の有無、斜視の有無ならびに種類を検討。

2. 眼瞼のチェック:腫脹の有無(浮腫・炎症の鑑別)、変色の有無をチェック。また、内反・外反の有無や睫毛乱生の有無をチェック。

3. 眼瞼結膜・球結膜のチェック:充血・浮腫・濾胞の有無ならびに異物・眼脂の有無をチェック。

4. 角膜のチェック:角膜表面の混濁・傷・異物の有無のチェック。

5. 瞳孔に光を当て対光反応及び瞳孔径の確認、水晶体混濁の有無をチェック。

 

「要再検査」を指摘されたら

 「要視力再検査」の用紙をもらったら、一度眼科での検査をお勧めします。学校検診では、視力低下の原因が、近視か遠視か乱視か病気によるものかはわかりません。また、眼鏡が必要かどうかもわかりません。仮性近視であれば、点眼治療で視力が回復する可能性があります。

 「眼疾病の受診勧告」をもらった場合も、眼科を受診してください。学校検診の際には行なえない精密検査で、治療が必要な状態かどうかなど、より詳しい説明をさせていただきます。


近視・仮性近視やさしい眼科通信2012年2月号第10回

 

遠くにピントが合わない理由

 今回は、仮性近視・近視についてお話します。

 

オートフォーカス機構

 目に入った光は角膜と水晶体により屈折し、網膜に像を結び、その像が視神経を通って脳に届くことで見ることができます。近くを見るときには、毛様体が縮んで水晶体を厚くすることでピント調節を行います。若いうちは水晶体に弾力があり、近くや遠くを見る時に、厚みをかえてピント合わせます。オートフォーカスの精巧なカメラということになります。レンズの屈折率を角膜が3分の2を担い、水晶体が3分の1を担っています。つまり、角膜と水晶体の二つがレンズの働きをしています。

 

ピントが網膜に結べない

 ところが、なんらかの理由でこのオートフォーカス機能に狂いが生じて、網膜にピントを結べなくなることがあります。するとピンぼけの映像しか写らず、視力が低下します。

 ピントが網膜から外れる理由は二つあります。眼球の奥行きの長さが、通常よりも長いか短いために、網膜にピントが合いづらくなること、もう一つは水晶体の厚さの調節、屈折率の調節がうまくいかなくなることです。このような状態を屈折異常・調節異常といいます。

 

仮性近視とは

 近くの物をジッと見ていると、近くにピント合わせをするために毛様体が緊張し、水晶体が厚くなります。長時間近くの物を見ていると毛様体が緊張を続け、遠くが見えにくい状態になってしまいます。この状態が仮性近視ですが、毛様体の緊張をほぐす点眼薬による検査で、仮性近視の有無が分かります。

 仮性近視が考えられる場合、毛様体の緊張をほぐす調節麻痺剤(ミドリンM)の点眼治療を行います。薬が効いている間は、瞳が開いてしまうためにまぶしく、近くが見えにくくなりますので、寝る前に点眼してもらいます。寝ている間に、目が遠くを見ているような状態にする目薬ですが、夢がまぶしくなったり見えにくくなったりすることはありません。

 子どもの視力低下の場合に検査をしてみると、仮性近視が関与しているケースは多く見られます。点眼薬で視力が回復する可能性もあります。学校検診で視力が下がったからと言って、いきなり眼鏡を作りに行かず、まずは眼科で精密検査を受けてください。

近視と言われたら

 近視は網膜よりも手前に光の焦点が結ばれてしまう屈折異常です。近くのものははっきり見えても、少し距離が離れているものは、輪郭がぼやけて見えます。主たる原因は子どもの成長と共に眼球の奥行きが長くなることがあげられます。角膜のカーブは2歳で大人と同じくらいの扁平さになります。また、眼球の奥行きの長さは、新生児では約17ミリですが、成人の正常値は24ミリと考えられています。

 検査の結果、近視と診断されたら、残念ながら点眼薬では視力回復ができません。それではすぐ眼鏡でしょうか。親の気持ちとしては、 「なるべく眼鏡はかけさせたくない」「これ以上視力を悪くさせたくない」 「近視が進まないようにできないか」 ということが多いでしょう。重要なことは学校生活に支障がないかどうか、ということだと思います。

 子どもは、視力が低下していても、急な変化ではありませんので、不自由は感じないものです。でも、黒板の字を読む時に目を細めたり、他の子よりも時間をかけて見ていた可能性があります。やはり、両眼で0.3を切るようでしたら、そろそろ眼鏡と考えた方がよろしいかと思います。「なるべく眼鏡はかけさせたくない」という気持ちの中には、かけると近視が進むという誤解があるようです。身長が伸びるのを止められないように、近視も徐々には進行します。眼鏡をかけなくても近視は徐々に進むと考えて下さい。一般的には身長の伸びが止まった後も近視は少し進み、20代後半に止まるようです。近視の場合は、眼鏡をかけなかったとしても弱視になる心配はほとんどありませんが、はっきり見えないという不都合がありますし、近視がかなり進行してからでは、適正な眼鏡に慣れるのに時間を要することもあります。

 

眼鏡かコンタクトか

 眼鏡が必要となった時に、眼鏡かコンタクトレンズか、と考える方もいらっしゃいますが、コンタクトをお考えでも必ず眼鏡は作ってください。眼鏡を持ってない場合、コンタクトで角膜に傷がついた時などに、はずすと見えないので無理してしまう人が多いからです。大切な角膜を守るためにも、家に帰ったらコンタクトをはずし、眼鏡をかけることを、勧めています。コンタクトは、少なからず角膜に負担をかけてしまう医療用具ですので、取り扱いは慎重にお願いしたいと考えています。小学生からのコンタクトは、基本的にはお勧めできません。


コンタクトレンズやさしい眼科通信2012年3月号第11回

 

目に入れても痛くない

 私には“目に入れても痛くない”ほどかわいがっているものがあります。大学2年生の時からですので、もうかれこれ28年の付き合いになります。それは、コンタクトレンズ(CL)です。

 私は強度近視でCLなしでは人前には出たくないですし、その恩恵にあずかっている一人ですが、そのありがたいCLでトラブルを起こす人が非常に多いので、正しく使用せずに危険にさらされている方には、ついつい辛口になる傾向があります。

 CLに対する私の考え方は、「あくまでも目にとっては異物であり、きちんと使用しなければ目に害を及ぼす危険性のあるもの」ですが、「きちんと使用すれば安全であり、視力の悪い人にとって非常に便利でありがたいもの」というものです。

CLの種類とその特徴

 CLは大きく「ハード」「ソフト」に分けられます。それぞれのレンズの特徴について説明します。

1. ハードレンズ

現在使われているハードレンズは、酸素透過性ハードCLと呼ばれるものです。安全性には最も優れています。ただ名前の通りレンズが硬いので、慣れるまでに時間がかかり、 異物感のため装用できない人もいます。 近視度数の強い人、乱視の強い人、1日の装用時間の長い人に適しています。

2.ソフトレンズ

 ソフトレンズは、通常のソフトレンズの他に、1日使い捨て、定期交換型、乱視用があります。名前の通りレンズが柔らかいので、慣れるのが早く、つけ心地は良好です。目に酸素がいきにくい弱点がありますので、長時間の装用はお勧めできません。また、細菌やアメーバなどに感染する危険がありますので、しっかりとしたレンズケアが必要です。ドライアイ、アレルギーのある人には向かないこともあります。

1)通常のソフトレンズ(コンベンショナルレンズ)

   洗浄・消毒・蛋白除去などのケアが必要です。 どうしても汚れが蓄積しますので、なるべく早めの交換が必要です。 アレルギー性結膜炎の症状の強い人には使えません。

2)1日使い捨てレンズ

   1日使ったら捨ててしまうので、汚れがたまる心配がありません。洗浄・消毒などのケアも不要です。アレルギー性結膜炎にも対応しやすいという利点があります。毎日使う場合は、コスト高になってしまいます。

3)定期交換型使い捨てレンズ

   1週間、2週間、1ヵ月で交換するタイプです。このうち1週間型は1週間、目につけたままのタイプで、トラブルが多くお勧めしていません。定期交換型は洗浄・消毒などのケアが容易で、1日使い捨てよりコスト面で有利です。

4)乱視用レンズ(トーリックレンズ)

   乱視の方でも、矯正することができます。乱視度数、乱視軸には制限があり、すべての方に対応できるわけではありません。

 

眼鏡のかわり

 CLを使用する人に(既に使用している人にも)強調したいのは、「眼鏡と併用しましょう」ということです。CLは角膜に直接載せますが、角膜に必要なものは酸素です。角膜は涙から酸素という栄養を受けるので、 正しいフィッティングで、酸素透過性の優れたレンズを正しい使用法で装用しなければなりません。起きている時間帯に眼鏡をかけて、CLをしていない状態の時間を持つようにしましょう。お勧めは家に帰ったら眼鏡に替えることです。仕事の時間が長い人は、夜に眼鏡にするか、それができない人はハードレンズをお勧めします。CLは眼鏡の代わりに使えるものですが、眼鏡の替わりに使うものではありません。

 

角膜内皮細胞

 不適切なCLを長期に使用した場合には、角膜障害を起こしてしまうことがわかっています。角膜内皮細胞は角膜の透明性を保つために重要な働きをしていますが、加齢とともに減少します。恐ろしいことにCLの誤った使用によっても減少し、一度減少した細胞は再生しないということがわかっています。透明な角膜を一生守るためには、正しいCLの知識が必要だと考えております。

定期検査が重要です

 今や多くの人がCLを装用し、その数は1800万人を超えるといわれています。しかし、不適切な使用により、装用者の710%に眼障害が発生していると報告されています。

 CLは処方して終わりではなく、使う人がしっかりとしたレンズケアをしながら検診を受けてもらい、問題が起きていないか確認しながら使っていく医療機器です。便利なもので逆に目に病気を起こしてしまっては、元も子もありません。調子が良いからと言って、定期検査を受けないと、目にトラブルが起きることがあります。大切な目です。 CLは“目に入れても痛くないように”かわいがって下さい。


アレルギー性結膜炎やさしい眼科通信2012年4月号第12回

 

季節型と通年型の2種類

 私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守る「免疫」という働きがあります。このありがたい免疫の働きが、かえって人間に害を与えることを「アレルギー」と呼びます。「過ぎたるは及ばざるが如し」といいますが、まさにありがた迷惑というのがアレルギーなのです。

 

アレルギー体質

 アレルギーはじんま疹などを起こしやすい過敏体質の人に多い病気です。気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、 アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などが、同じグループの病気と考えられますが、目の他に症状はないけれど、目だけかゆいという方は、アレルギーが軽症と考えることができます。

 アレルギー疾患の有病率は、世界的に増加し、またすべての年齢層に広がっています。我が国では、全人口の約1520%がアレルギー性結膜炎を有すると推定されています。

 

アレルギー性結膜炎

 目のアレルギーのうちで代表的なアレルギー性結膜炎は、春や秋など毎年決まった時期に起こりやすい季節型と季節にかかわりなく起こる通年型があります。季節型は花粉症の目の部分症状と考えることができます。 北海道での花粉症の原因となりやすい植物は、 34月のスギ・ヒノキ科、 5月のシラカバ属の植物、 68月のイネ科植物、 9月のキク科植物が挙げられます。

 一方、通年型の原因物質としては、ハウスダストという家の中で発生する細かいホコリで、ダニの死体やフン、カビ、ペットの毛やフケなどが考えられています。

 症状としては、強い痒みが主なもので、炎症がひどくなると瞼の裏の結膜や、白目の充血が起こってきます。 急に強い炎症が起きたり、目を強くこすりすぎた時には 白目が腫れて水がたまったようになります。

 

効果的な治療は目薬

 アレルギー性結膜炎の治療には目薬が効果的ですが、セルフケアも大切です。セルフケアとは、自分でできることであり、アレルゲンとの接触を避ける、たばこの煙、気温の変化、風などの刺激を避ける、などがあります。そのほか花粉の飛散が多い時期には外出を控え、外出時に眼鏡・マスクを着用するといったことも重要になります。

 アレルギー性結膜炎の治療の目薬は、1)抗アレルギー薬、2)抗ヒスタミン薬、3)ステロイド薬、4)人工涙液の4種類に大きく分けられます。

 第一選択はアレルギー性結膜炎治療の基盤となる抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬であり、重症度に応じてステロイド薬の使い分けが必要となります。

(1) 抗アレルギー薬

 近年、いくつかの抗アレルギー薬が新しく点眼薬として開発されており、現在は6種類の抗アレルギー点眼薬から選択することができるようになりました。抗アレルギー薬は、副作用も少なく、適切な使用方法によりかなりの効果が期待できますが、症状が悪化してから使ってもあまり効きません。 季節型の場合は症状が出る前からの点眼がお勧めです。 通年型は症状軽快時にも点眼回数をやや減らして、 点眼継続するなどの工夫が必要です。

(2) 抗ヒスタミン薬

 アレルギー反応が始まると、ヒスタミンという物質が放出されて痒みや充血を引き起こします。抗ヒスタミン薬はこれを抑えます。3種類の点眼薬があり、比較的かゆみや充血を抑える力が強いようです。

(3) ステロイド薬

 アレルギー性炎症が慢性化したり重症化した後では、 ステロイド薬が必要になることが多いものです。軽症では、症状のひどい時に短期間、低濃度のステロイド点眼薬を併用すればかなりの効果があります。重症になると高濃度のステロイド点眼薬が必要になります。ステロイドには白内障や緑内障をひき起す危険がありますので、眼科専門医の定期検査が必要です。特に小児では、眼圧上昇を引き起こす頻度が高いため、定期的に眼圧を測定する必要があります。

(4) 人工涙液

 ドライアイはアレルギーを起こしやすくするだけでなく、 悪化させることもあることが分かっています。通年型にドライアイを併発していることも多いので、検査をお勧めします。 人工涙液は防腐剤が入っていませんので、頻繁に使ってアレルゲンを目の中から洗い流すのはとても有効です。最近市販されているカップ式の洗浄器具は、眼周囲の皮膚の汚れや皮膚に付着した抗原をかえって眼表面に接触させることになり、洗浄器具としては薦められません。 

 花粉症、アレルギー性結膜炎の患者さんも増加していますが、アレルギーに処方する薬も増えてきています。また、アレルギー性結膜炎の重症型と考えられる春期カタルには、免疫抑制剤の点眼薬も使えるようになりました。薬は合う合わないもありますので、 自分に適した薬を見つけて、アレルギーとうまく付き合っていくようにしていただきたいと思います。近くの眼科で医師に気軽に相談してください。


ウイルス性結膜炎やさしい眼科通信2012年5月号第13回

 

はやり目にご注意

「結膜炎とは、結膜の炎症性疾患の総称です」と言っても、分かったような、分からないような説明ですよね。結膜炎は眼科の病気の中でも、非常に多く見られるものですが、一言で説明するのは非常に難しいと思います。

 

結膜とは

 結膜炎の結膜は、白目を覆っている透明な粘膜です。目のまん中の黒目(角膜)の縁から瞼の裏側まで続いています。結膜は、場所によって名前が付いており、白目の表面を球結膜、瞼の裏側を瞼結膜といいます。この結膜が赤くなったり(充血)、腫れたり(浮腫)、瞼の裏にブツブツができたり(濾胞)、目やにが出たり(眼脂)、涙が出たり(流涙)、痒くなったり(掻痒感)、ゴロゴロしたり(異物感)という症状が出たら結膜に炎症が生じていると考えられます。

 

結膜炎の原因

 結膜炎の原因として、

1. ウイルス

2. 細菌

3. アレルギー

4. その他

の4つがあります。「はやり目」は、結膜炎の中でもウイルスが原因で起きるもので、人にうつる危険性がある感染性の結膜炎です。

 

効果的な治療は目薬

 「はやり目」には、流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎の3つがあります。流行性角結膜炎と咽頭結膜熱の原因はアデノウイルスで、急性出血性結膜炎の原因はエンテロウイルスかコクサッキーウイルスです。

 原因ははっきりしているものの、これらの原因ウイルスをやっつける特効薬はまだ開発されておりません。感染したウイルスに対する免疫ができて、自然に治るのを待つしかないのがつらい所です。

 以前は「インフルエンザのようなものです。インフルエンザは普通の風邪より症状が強くて、うつり易く特効薬がないのです。安静にして体力をつけて治るのを待ちましょう。」と説明しておりましたが、すでにインフルエンザには、特効薬が開発されましたので、良い例え話ができなくなってしまいました。

 はやり目にも特効薬が開発されることと期待しております。

 

診断方法は

 アデノウイルスによる結膜炎は、以前はその症状、所見から診断していました。普通の結膜炎より症状が強い場合、つまり充血が強い、目やに・涙が多い、ゴロゴロ感が強いなどの症状です。現在では、アデノチェックという角結膜上皮細胞中のアデノウイルス抗原検出試薬がありますので、短時間でアデノウイルスによる結膜炎を確定診断することができます。

 アデノチェックで陽性反応が出た場合、間違いなくアデノウイルス結膜炎と診断できますが、陰性反応の時には、アデノウイルス結膜炎でないとは、断言できません。これは、検査の感度の問題で、ウイルスの量が少ないと陰性に出てしまう場合があるためです。特効薬がないのに、検査をする理由は、うつるものか、そうでないかを明らかにするためです。はやり目であることがわかれば、家族や他の人にうつさないように万全の体制をとっていただくためです。

 

はやり目は伝染るんです

といっても、空気感染する訳ではありません。目を触った手からうつります。ですから一番の予防策は手洗いです。せっけんと流水でよく洗って下さい。目がいずく、どうしても触りたくなると思いますが、その時は、ティッシュペーパーを使い、専用のビニール袋にためて捨てるようにしましょう。

 不用意にゴミ箱に捨てますと、ゴミ箱をきれいにする時にうつってしまう可能性があります。

 タオルの共用は止めましょう。そして、幼稚園・学校は休まなければなりません。

 他の人に接する仕事であれば、休んで下さい。感染力が持続する期間は、流行性角結膜炎や咽頭結膜熱では約12週間、急性出血性結膜炎では34日です。

 

うつらない、うつさないように注意

うつらないために普段から注意すること

・ 目をこすったり、触ったりしない

・ 手はせっけんと流水でよく洗う

・プール後は目を洗う

なってしまったら、うつさないために特に注意すること

・ 目をこすらない、触らない(ティッシュペーパーで触れて確実に捨てる)

・ 手はせっけんと流水でよく洗う(触れた蛇口も洗う)

・ プールは許可が出るまで禁止

・ 学校、幼稚園、保育園は許可が出るまで休む

・ タオルや洗面用具は使い回ししない

・ お風呂は最後に入る

・ 休養をとって体力を落とさない


飛蚊症やさしい眼科通信2012年6月号第14回

 

「私の目の中の

 数年前に「私の頭の中の消しゴム」という映画がヒットしましたが、今回は、眼科を受診されるきっかけとして比較的多い、「飛蚊症(ひぶんしょう)」についてのお話です。飛蚊症の正体は「私の目の中の濁り」なんです。

 飛蚊症の不快な症状を訴える患者さんのお話を伺っていますと、?「嫌な気分」の訴え方にも、十人十色、色々あります。「睫毛に何かついているみたいで、うっとおしい」「ススが飛んでいる」「カエルの卵みたいなものが動いている」「タバコの煙の輪が飛んで見える」「フワフワした雲みたいなものが見える」「髪の毛みたいなものが動いている」「微生物みたい」「ゴマが見える」 などなど・・・皆さん、不快な症状を色んな言い方で教えて下さいます。典型的には目の前に「黒いものが飛ぶ」と言われていますが、黒いものから透明なものまで色もさまざまで、数も1個から数個、時に多数のこともあります。目を動かすと、ふわっという感じで目と一緒に動いて見えます。

 

飛蚊症とは

 目の構造はよくカメラに例えられます。カメラのボディは硬く頑丈に作られていますが、目は柔らかく、カメラのボディの中は空っぽですが、目の中には硝子体(しょうしたい)という生卵の白身のようなドロドロした透明な液体が詰まっています。

 この硝子体の中に濁りができると、明るい所を見た時に、その濁りの影が目に底の網膜に映り、それを飛蚊症として 感じるわけです。

 飛蚊症の原因は、硝子体の濁りなのですが、この濁りの原因が、病気によるものなのか、そうでないのかを鑑別することになります。

 

飛蚊症は心配ないって聞いたけど

  飛蚊症で受診される方のほとんどは、心配のないもの(病気ではないもの)なのですが、なかには網膜剥離や網膜剥離の原因となる網膜の穴が見つかる場合や、目の中の出血や、目の中の炎症など病的なものが原因となっている場合もあります。

 飛蚊症には、心配ないもの:生理的飛蚊症と、病気によるもの:病的飛蚊症の二つががあることになります。

 

精密眼底検査

 この二つの飛蚊症を鑑別するためには、瞳をひろげる必要があります。瞳をひろげる目薬を点眼し、30分くらい待って、詳しく目の中の一番端まで、検査する必要があります。

 検査自体は少しまぶしいくらいで、痛くない心配のない検査です。ただし検査後も34時間瞳がひろがっているため、見づらくなりますので、なるべくご自分で運転せずに眼科を受診してください。

 

生理的飛蚊症

 精密眼底検査で、目の中に病気が見つからなければ、その飛蚊症は心配なものではなく、生理的飛蚊症です。生理的飛蚊症の硝子体の濁りは年をとることによって生じた硝子体の変化によるものです。と、お話しますと、「年のせいですか・・・」と無意味にがっかりさせてしまう心配がありますので、「20歳を過ぎた頃から出てくるのですが・・・」と説明させていただいております。と言いますのも、20歳頃から飛蚊症を感じている自分が、 「年のせい」とは思いたくないという気持ちの表れかもしれません。

 

病的飛蚊症

 これは目に病気があって硝子体に濁りができるものです。飛蚊症が病気の初発症状になっているわけですから、見逃すことはできません。

1. 網膜裂孔・網膜剥離

 神経の膜である網膜に穴があく病気です。穴があく時に飛蚊症、光視症(暗い所で光が見える症状)を伴うことがあります。早く見つければレーザー光線で穴の周りを焼き囲み、網膜剥離になることを防ぐことができます。

 見つけるのが遅れると網膜剥離となり、手術が必要となってしまいます。

2. 硝子体出血

 出血の原因は網膜に穴があいた時、網膜の血管に病気のある時などです。糖尿病網膜症が悪化して、出血する場合もあります。

3. ぶどう膜炎

 目に炎症の起きる病気に伴って、硝子体が濁る場合があります。これら病的飛蚊症の場合は、それぞれに適切な治療が必要になります。

 

飛蚊症を感じたら

 飛蚊症を自覚した日時がはっきりしている時、視力低下、かすみなどの症状を伴う時は、病的飛蚊症の可能性がありますので、なるべく早く診察を受けに来て下さい。

 網膜の端まで診せていただいて、異常がなければ心配のない場合がほとんどですので、まずは安心のために診察を受けていただきたいと思います。


ドライアイやさしい眼科通信2012年7月号第15回

 

「ドライな人、増えてます」

 ドライアイ患者は、およそ800万人と言われています。初期症状はとてもあいまいで、何となく目が疲れやすいという感じで、自分では気づきにくいものです。気になる方は、ドライアイの検査をお勧めします。

 

無意識に出る涙は大切

 涙は上まぶたの外側にある涙腺(るいせん)で作られます。涙というと、悲しい時に出る涙を思い浮かべますが、目にゴミが入った 時やタマネギをきざんだ時にもたくさん出ますし、アクビをしても出ます。それ以外に重要な涙は、意外にも出ていることを意識させずに出ている涙なのです。この涙は、1日分溜めたとしても0.61mlですから、1年分でも220365ml 。コーラの細い缶から太い缶くらいにしか溜まらないことになります。この涙を基礎分泌といいます。

 

関係する3つの神経

 涙の分泌を刺激する神経は、角膜の知覚を司る三叉神経、自律神経である副交感神経と交感神経の3種です。目にゴミが入った時やタマネギをきざんだ時などの反射性分泌は三叉神経、悲しい時などの感情的な涙の分泌は副交感神経、基礎分泌には交感神経が作用しています。

 

涙の三層構造

 目の表面にある涙の大部分は涙腺から分泌される水分ですが、実はそれだけではありません。水分の蒸発を防ぐ油分や、水分を保持する働きのあるムチンというネバネバした物質が層となり表面を覆っています。この水分が減ったり、油分の減少で水分が蒸発しやすくなったり、ムチンが少ないために水分が保持できなくなるなど3つの成分のバランスが崩れると、ドライアイの症状が出ると考えられています。

 

多彩な症状

 ドライアイは涙の量の減少や涙の質の変化で、目の表面の角膜や結膜に障害が起きた状態のことです。目の表面の乾きによる症状は多彩で、疲れる、重い、目がショボショボ・ゴロゴロする、充血する、痒い、痛い、視力が下がった、まぶしい、目やにがでるなど、他の病気でも見られる症状が目白押しです。そこで視力検査など眼科一般検査をひと通り行い、ドライアイが疑われた場合には涙の検査になります。

 

微細な傷は染色で

 細隙灯顕微鏡検査で涙不足で目の表面に傷がついていないかを調べます。もちろん、そのまま顕微鏡で観察することもできますが、微細な傷は色素で染色することによって、わかることがあります。フルオレセインという色素をつけて、コバルトブルーフィルターを通した光で照らすと、傷ついた部分が色素に染まって見えます。また、この時に少し瞬きを我慢してもらい、涙の膜の安定性を調べる検査も行います。次に涙の量を測るシルマーテストと呼ばれている検査を行います。細長い濾紙を下まぶたに挟んで、5分間でどれくらい濡れるかで涙の分泌量を測定します。5分後に5ミリメートル以下だとドライアイと診断されます。

 

治療方法は2つ

1.点眼薬で目を潤す。

 不足している涙の替わりに、人工涙液を点眼して直接目の表面を潤すのが、ドライアイの基本的な治療法です。人工涙液の点眼液は、頻繁に点眼していただきます。保水効果のあるヒアルロン酸の点眼薬を処方することも多くあります。新たに水分とムチンの分泌を促す「ジクアホソルナトリウム」という点眼薬も発売されました。また、点眼薬ではありませんが、朝起きた時の目の表面の状態を良好に保つために、寝る前につけてもらう眼軟膏を処方することもあります。

2.涙点プラグ

 少ない涙を有効に使う目的で、涙点プラグを入れる方法もあります。これは涙点を塞ぐことで、少ない涙を目の表面に長く留まるようにする方法です。顕微鏡を使って、目頭の涙点に小さなプラグを差し込むというものですが、痛みもなく短時間でできる方法です。コラーゲンを使用した液状の涙点プラグも新しく使えるようになりました。

 

意識してまばたきを

 日常生活の工夫で症状が楽になることもあり、その一つがまばたきです。まばたきをするたびに目の表面に涙が送り込まれます。普段は1分間に20~30回のまばたきを繰り返していますが、コンピュータ画面を凝視している時や、集中して小さな文字の書類を見ているときには、普段の4分の1にまで低下していると言われています。仕事中などは、意識してまばたきの回数を増やすことも目の表面のリフレッシュになると思います。また、部屋の空気は乾燥しがちですので、加湿を心がけ、温かいタオルで目を温めるのも良い方法と考えられます。


老眼やさしい眼科通信2012年8月号第16回

 

避けて通れぬ老眼の対処法

 「近くのものがなんだか見えにくくなった」そんな変化は老眼の始まりかもしれません。老眼は誰もが避けて通ることができない、目の加齢に伴う変化です。40歳を過ぎたころから、少しずつ老眼の症状が出てきます。他の目の病気も出てくる可能性のある年代ですので、おかしいなと思ったら、眼科を受診してください。

 

水晶体の弾力が落ちると

 目の中に水晶体というカメラのレンズに相当する組織があります。カメラでは、レンズが前後に動くことによって遠くや近くにピントを合わせてくれますが、私たちの目は、水晶体がその厚みを変えることによって遠くのものや近くのものにピントを合わせることができます。しかし年齢とともに水晶体の弾力性がだんだんと弱くなるために、厚みを変えることができなくなってきます。そのために、近くのものにピントが合わせにくくなってくるのが、老眼です。

 

こんな症状が起きたら

 もちろん、ある日突然、水晶体が硬くなってしまうわけではありませんので、だんだんと「アレッおかしいな」と思うことが増えてきます。「おかしいな」と思うこととして、

本を読む時、腕を伸ばしたほうが見やすい。

少し暗くなると、本が読みにくくなる。

本を読んでいて、ヒョイと目をあげるとぼんやりと見えていて、ジッと見ていると、だんだんはっきりしてくる。

◯値札の金額を見間違えることがある。

◯パソコン画面を見ていると、すぐ目が疲れてしまう。

◯針に糸を通すなど、細かい作業が苦手になった。

こんな症状が起きてきます。

 

老眼鏡か遠近両用眼鏡を

 少し暗くなると本が読みにくくなるなど、暗くなると老眼が悪化したように感じるのは、どうしてでしょうか。暗い所ではカメラの絞りにあたる虹彩が光をより多く取り入れようとするために、瞳(瞳孔)が広がります。瞳が広がると焦点深度が浅くなるので、老眼が悪化したように感じるのです。本を読んだりする時は、手元を明るくして読むようにしましょう。手元が見えにくい状況が出て来たら、そろそろ近用鏡(いわゆる老眼鏡)のお世話にならなければいけません。手元が見えにくいのに無理をしていると、目の疲れ、肩凝り、頭痛などの症状を引き起こすこともあるのです。

 もともと近視で眼鏡をかけている人は、遠近両用眼鏡に替えたとしても、今は多焦点レンズの良いものが出ていますので、境目がなくほかの人からは遠近両用眼鏡とわかりませんから、スムーズに移行することができると思います。

 もともと遠視があり遠くが良く見えていた人は、近用鏡に抵抗があるようです。遠視の方は、遠くを見る時にも、水晶体が若干厚くなってピント合わせをする必要があるため、近くを見る時にはさらなる水晶体のピント合わせが要求されます。そのため、遠視の方は早いうちに手元が見えにくいという状況になります。遠くの視力が良好でこれまで眼鏡をかけていなかったという人は「目に自信がある」人が多く、近くを見る時だけに眼鏡を掛けると、人より老けて見られるので嫌だという気持ちが強いようです。でも、日常生活で近くを見る機会は非常に多く、無理をせず近用鏡を使うことによって、「疲れがとれて楽になった」と感じることがあります。

 

遠近両用コンタクトレンズ

 コンタクトレンズが普及してから、年数も経過していますので、コンタクトレンズユーザーの中にも、老眼年齢に達している方々が増えてきています。そのニーズに応えるように遠近両用のコンタクトレンズが開発され、装用者が増えつつあります。遠近両用コンタクトレンズにも、ハードとソフトタイプの2種類のレンズがあります。遠近両用コンタクトレンズは、1枚のレンズの中に遠くをよく見るための遠用部分と近くをよく見るための近用部分が組み込まれています。それまで、ハードレンズを使っていた人は、もちろんハードの遠近両用レンズがお勧めです。ソフトレンズを長期間使ってきた人の中には、角膜内皮細胞が大きくなって、その数が減ってしまっている人もいますので、詳しい検査のうえ、使用が可能か相談が必要な場合もあります。

 

まずは眼科で検診を

 老眼かなと思ったら自己判断で済ませずに、眼科の検診を受けてください。眼科ではきちんと検査したうえで、老眼による視力低下であるとの診断をします。自分では老眼だろうと思っても、他の病気による視力低下が見つかることもあります。


緑内障やさしい眼科通信2012年9月号第17回

 

確率17分の1の病気

17分の1」という確率は高いのか低いのか、皆さんはどう感じられますか?

 40歳以上の17人に1人と言われたらどうですか。久しぶりに集まったクラス会。クラスの中に2人か3人いるとすると多いですよね。

 実はこの40歳以上の17人に1人というのは、緑内障の患者の割合なのです。日本緑内障学会の調査によると、60歳代で13人に1人、70歳以上で8人に1人が緑内障ということが分かりました。

 

緑内障とは

 緑内障は視神経がおかされて、見える範囲(視野)が狭くなる病気です。視神経は100万本以上の神経線維の束で、網膜に映った像を脳に運ぶ、いわば目と脳をつなげるケーブルの働きをしています。電気器具のケーブルが接続部分で壊れやすいように、視神経も視神経乳頭と呼ばれる眼球からの出口の部分が傷害を受けやすくなっています。視神経乳頭に傷害を与える一番の原因は、眼球内の圧力(眼圧)と考えられています。

 

眼圧が正常でも

 目には一定の硬さがあります。これは、目の中で作られる水と出る水が丁度つり合っていて、目の硬さをほどよい状態に保っているからです。眼圧は血圧と同じ単位(mmHg)で測定されますが、正常の眼圧は1021mmHg です。眼圧が上がることによって、視神経乳頭の傷害が起こることは解明されており、以前は緑内障と言えば眼圧が高いと考えられていました。しかし、日本人には眼圧が正常範囲に入っていても緑内障になる人が多いことが判明し、正常眼圧緑内障と呼ばれています。正常眼圧緑内障では、視神経の強度が関係しているとみられ、たとえ正常範囲内の眼圧でも、その患者にとっては負担になっていると考えられます。

自覚症状がほとんどなく

 視神経がおかされると徐々に消失してしまい、その部分の情報は脳に伝わらずに視野が欠けてしまいます。しかし、視神経の傷害はゆっくりと起こり、視野も少しずつ狭くなっていくため、自覚症状はほとんどなく、知らないうちに病気が進行しているのが緑内障の怖いところです。視神経線維の半分がなくなってはじめて、視野の異常に気づくのが普通です。

 また、両方の目の視神経の同じ場所を見る神経が同時におかされるわけではないので、両目で見ている分には、片方の目で補われるために、視野狭窄をなかなか自覚することができません。視野がかなり狭くなって視力低下も生じてから、自覚症状として現れるということもあります。

 緑内障は、眼圧検査、眼底検査、視野検査などから診断でき、これらは眼科で一般的に行われる検査なので、眼科受診した際に偶然発見されるということが最も多いのです。

 眼底検査では網膜の視神経乳頭のへこみ具合を調べます。視神経乳頭は神経線維が集まってできているので、視神経が消失するとその部分のへこみが変形したり大きくなったりします。通常の眼底検査だけでなく、眼底カメラで記録する方法、光干渉断層計などの画像解析装置を用いる方法などがあります。

 視野検査は光の見え方で視野の欠け具合を調べる検査です。精密な視野検査をすることで、視野が正常か異常か、また病気の進行状態を調べることができます。

 

眼圧を低くコントロール

 緑内障による視野の欠けや狭まりは、治療で元に戻すことはできません。現時点の医学では、一度傷害された視神経を回復することはできません。治療の目的は、それ以上に進まないようにすることです。早期に発見して早くから治療を受ければ、失明に至らず視力を保つことができます。治療は、傷害を与える一番の原因である眼圧を低くコントロールするということです。

 現在では緑内障治療の点眼薬だけでも10種類以上あり、非常によく眼圧を下げる点眼薬も出ています。まずは点眼薬による治療が開始されますが、病状の進行が止められない場合にはレーザー療法、手術療法が必要になる場合もあります。

 

似て非なる緑内障と白内障

 緑内障は、白内障とならんで壮年期以降の人々にみられる眼科の代表的な病気です。白内障の多くは、白髪や肌のシワと同じで、年齢とともに誰にでも起きる変化ですが、緑内障は皆に起きる変化ではありません。緑内障と白内障、名前はよく似ていますが、全く別の病気です。

 生涯にわたり目の健康を保つために、40歳を過ぎたらぜひ、眼科での目の検診を受けることをお勧めします。できれば1年に1回、最低でも3年に1回は、緑内障の定期検査を受けてください。血縁者に緑内障の人がいる方は、特に注意が必要です。


糖尿病網膜症やさしい眼科通信2012年10月号第18回

 

甘くない目の話

 今回は成人の失明原因の上位の病気の「甘くない目の話」です。毎年3000人以上が、合併症で視力を失っている「糖尿病」の話です。糖尿病は内科の病気ですが、眼科にも大いに関係があります。で、糖尿病の方には耳の痛い話になってしまいますが、痛い目に合わないように、お付き合い下さい。

 

糖尿病とはどんな病気

 その名前から「尿に糖が出る」病気と考えられがちですが、血液に含まれる糖分(血糖値)が多い状態が続く病気です。食事に含まれる糖分は、膵臓からでるインスリンというホルモンでエネルギーに変えられますが、糖尿病では、このインスリンの量や働きが低下してしまうことによって、血糖値が高くなってしまいます。

 のどが渇く、多尿になるというのが、有名な糖尿病の症状ですが、それらの症状は高血糖が持続した場合に出るもので、多くの糖尿病の方は無症状です。糖尿病実態調査によりますと、糖尿病が「強く疑われる人」が690万人、「可能性を否定できない人」の680万人を合わせると、全国に1,370万人いると推定されています。 でも、糖尿病の治療を受けている人が約212万人しかいない理由は、自覚症状が出にくいためと思われます。

 

糖尿病で目が悪くなるの?

 糖尿病ではカメラのフィルムにあたる目の網膜が侵されてきます。「糖尿病網膜症」で、カメラのフィルムの感度が低くなったり、フィルム自体が破損してしまうような状態です。網膜は細かい血管が張りめぐらされており、画像を映すという働きのためには充分な酸素が必要です。糖尿病の血液は糖分が多く含まれているため血管に負担がかかり、血液の流れが悪くなって、網膜に十分な栄養を運ぶことができなくなってしまうのです。

 

発症には数年かかる

 糖尿病網膜症も、初期には自覚症状がありません。糖尿病になってから糖尿病網膜症が出てくるには数年から十年くらいかかることがわかっています。糖尿病にかかってすぐ目に来るわけではありませんし、血糖コントロールが良好な場合は、網膜症は出てきません。初期には自覚症状がありませんので、ここで眼科の出番です。

 糖尿病と診断された方は、見え方が何ともなくても眼科を受診し、眼底検査を受ける必要があります。糖尿病網膜症は眼底出血から始まりますが、眼底写真の検査だけでは見逃されることもあります。眼底写真は目の奥の中央部分のみしか撮せないからです。精密眼底検査を受けることをお勧めします。

 

進行状態と治療法

 糖尿病網膜症は、単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症の3段階で進行します。単純網膜症では、眼底出血、白斑が見られます。この段階では視力には影響がなく、血糖コントロールの改善によって治すことができます。しかし、視力に影響の出てくる増殖前、増殖網膜症の前段階ですので、定期的に眼科を受診し、網膜症が悪化していないか確認することが大切です。

 増殖前網膜症では軟性白斑というシミが多数出てきます。正確な状況をつかむために蛍光眼底造影検査をすることがあります。この段階でも、視力に影響の出ていないことが多く、失明につながる最大の要因です。この段階でレーザー光凝固術を行うことが失明に至ることを食い止める最良の治療です。

 増殖網膜症は新生血管が出現し、新生血管が破れて起こる硝子体出血、増殖膜、網膜剥離という重症な段階です。目の中にすすが飛んだり、赤いカーテンがかかるなどの自覚症状が出ると、相当に進んで手遅れに近い状態です。硝子体手術が必要になってきますが、その前にレーザー光凝固術が十分に行われているかどうかが、結果を左右することが多いのです。

 これらの3段階がどのくらいのスピードで進むかは、人によって違います。血糖コントロールがきちんと行われている人は進むのが遅いと考えられています。増殖網膜症にまで至らずに、途中で進行が止まり安定することも多くあります。比較的若い人(4050歳)は、進行が速いことが多いので特に注意を要します。

 

糖尿病と言われたらまずは眼科で検診を

 糖尿病の方は糖尿病網膜症の治療の時期を逸しないよう、自覚症状がなくても定期的な精密眼底検査を受けることが重要です。検査・治療を続けていれば、糖尿病が原因で失明することを防ぐことができます。

 糖尿病と言われたら、内科での血糖コントロールと眼科での精密眼底検査が必要です。

 内科では「糖尿病手帳」がありますが、眼科には「糖尿病眼手帳」があり、内科の先生と連携をとって治療していきます。


白内障やさしい眼科通信2012年11月号第19回

 

「私の目が黒いうちは

 「私の目が黒いうちは」というセリフ、テレビドラマでこわもてのお父さんが言うのをたまに見かけますよね。今回はそういう話ではなく、進行すると瞳の中央が白くなってくる白内障についてのお話をー。

 

どんな病気

 白内障とは、目の中のピント合わせをする水晶体が白く濁ってくる状態です。冬の寒い日に、外から家の中に入った時に、眼鏡が曇って見えなくなるように、目の中に曇ったレンズが入っているために、かすむ状態が白内障です。水晶体が濁り始めると、ものがかすんだり、二重に見えたり、まぶしく見えたりし、進行ると視力が低下し、眼鏡での矯正ができなくなります。

手術で取り戻せる視力

 白内障になると、初期のうちには薬によってその進行を遅らせることができる場合がありますが、完全に治療することはできません。進行した白内障は、濁った水晶体を手術によって取り除く方法が一般的で、視力を取り戻すことができる良性の病気です。

 白内障と診断されても、本人が苦にならなければ、急いで手術を受ける必要はありません。いつ手術を受けるかは、「本人が不自由を感じた時」だと思います。それほど安全な手術です。私が眼科医になったころは、視力が0.3以下になってから手術を考えましたが、現在は、それぞれの生活状況、必要性に応じて判断すればいいと考えています。自動車を運転をしている人であれば、視力が0.7以下になったら手術が必要だと思います。

 手術は局所麻酔で行われ痛みはありません。手術時間は程度によってさまざまですが、通常1030分程度です。国内で年間100万件以上行われています。

 

縫合が必要ない手術

 手術は超音波乳化吸引術というのが一般的で、3ミリ以下の傷から超音波の力で水晶体の濁った中身だけを吸い出します。この最新技術を支える水晶体超音波乳化吸引装置は、綿密な計算が可能なコンピュータを搭載していて、超音波によって砕いた水晶体を吸収し、できた空間に水分を流し込み、眼球の形を保ちながら手術が可能です。水晶体は、昔懐かしい肝油のような大きさ、形です。肝油が薄い袋に包まれていると考えてみて下さい。上の袋を破いて、濁った中身を吸い出して、残った袋の中に水晶体の屈折力を補正するための眼内レンズを挿入します。眼内レンズも、傷口を小さくするために折り畳んで入れるやわらかいものが開発されていますので、傷口が3ミリのままで済み、縫合の必要がありません。

 手術は、患者の全身状態や手術後の通院に問題がなければ、日帰りでも可能です。通院できる方、重篤な合併症がない方、家族の協力が得られる方などが条件となります。手術直後は普通、充血があります。しばらくは、目がゴロゴロする、チクチクする、涙がでる、目やにが多い、目がかすむ、などの症状が続きますが、1~2週間でなくなります。目の手術というと怖いイメージがありますが、白内障の手術技術、器械は進歩し、材質の良い眼内レンズも開発されていますので、安心して手術を受けてください。

 手術で、ほぼ白内障が起きる前の見やすさを取り戻せますが、眼内レンズはピントを調節する機能がなく、不便に感じることがあります。その場合は眼鏡を使用します。眼鏡は手術後1カ月ほどたって、視力が落ち着いてから作ってもらいます。

 2008年2月に多焦点眼内レンズと呼ばれる遠近両用の眼内レンズも認可され、これだと術後に眼鏡をかける時間が少なくて済むようです。遠近両用眼内レンズは保険が適応されず、片目の手術に3545万円の自己負担となります。

 

日帰り白内障手術を考えている方へ

 白内障手術を「日帰り手術で行うから簡単なんでしょ」と安易に考えられている人がいますが、日帰りで手術をしますが、手術内容は入院手術と同じです。術後を病室で過ごすか、自宅で過ごすかの違いだと考えてください。手術後、安静を強いることはありませんが、手術当日は眼帯をするので、片目だと遠近感が分らなくなり、非常に足元、手元がおぼつかなくなります。台所仕事などは、避けるようにお話しております。

 白内障手術での一番の心配は目にばい菌が入ることです。手術後は目をこすらないことが、最も重要です。3日間は入浴を禁止していますし、2週間は保護眼鏡をかけてもらっています。また、しばらくは、ばい菌止め(抗菌剤)、炎症止め(消炎剤)の目薬を使ってもらいます。

 白内障は、怖い病気ではなく、誰もがなる病気です。しかし、目がかすむのは白内障だからと安心していたら、緑内障など他の目の病気が見つかる場合もあります。40歳を越えたら、一度目の診察を受けることをお勧めします。


後発白内障やさしい眼科通信2013年1月号第20回

 

「白内障の手術は1回しかできないの?」

 外来で患者さんの診察をしている中で、よくある質問の一つに「白内障の手術は1回しかできないのですか」というのがあります。白内障の手術自体は1回しかできないのではなく、1回しかする必要がないことを話していますが、他の病気になってしまった時には、その治療が必要になります。今回は白内障の手術の後に生じる最も頻度の高い合併症である後発白内障についてのお話をー。

注意、手術後の視力低下

 白内障手術が問題なく無事に終わり、視力回復が得られて順調に過ごしていたケースでも、手術後しばらくたってから視力が低下してくることがあります。他の病気にかかってしまったためという場合もありますが、後発白内障が原因ということが多くみられます。

 現在の白内障手術は、水晶体の袋の前面(前嚢)を円形に切除し、水晶体の中身を超音波の器械で破砕吸引し、袋の後面(後嚢)は残し、その袋の中に眼内レンズを移植します。手術後数か月から数年経過したころに徐々に水晶体の後嚢が濁ってきますが、これは後嚢混濁と呼ばれます。この後嚢混濁によって視力低下をきたした状態を後発白内障といいます。

 

3つのタイプ

 後発白内障は手術後に残った水晶体上皮細胞が増殖・分化して生じる水晶体の不完全な再生と考えられています。現在の白内障手術では、水晶体嚢を温存しますので、水晶体上皮細胞を完全に除去することは不可能なため、後発白内障が起きることがあります。

 後発白内障は、臨床上3つに分類されます。一つは線維性後嚢混濁で、前嚢切開縁を中心に白濁が広がるものです。二つ目が水晶体前後嚢に囲まれた水晶体周辺部がドーナツ状に盛り上がるゼンメリング輪です。そして三つ目が眼内レンズと後嚢の間に生じるキャビア状の「エルシュニッヒ真珠」と呼ばれるタイプのものです。

 

術後5年で30%の発生率

 発生率については、多くの報告がなされています。眼内レンズの素材、眼内レンズ光学部のエッジの立ち方などのデザイン、前嚢切開の大きさなどがその発生率に影響すると考えられていますが、おおよその発生率は、術後1年で10%、3年で20%、5年で30%くらいと言われています。

 後発白内障が発生しやすい患者側の因子としては、ぶどう膜炎、網膜色素変性、アトピー、強度近視などがあり、白内障術後に炎症をきたしやすいことが後発白内障の発生を促すと考えられています。

 

痛みのないレーザー手術

 後嚢混濁が進行し、視力低下が起きたらレーザー治療が行なわれます。ネオジム・ヤグレーザーのレーザー光が1点に収束したときに生じる衝撃波によって、後嚢を切開します。

 この治療は通常外来で使用している細隙灯顕微鏡と同様の器械にレーザーが組み込まれていますので、外来で実施することができます。コンタクトレンズを目に装着して治療を行ないますので、点眼麻酔を使用しますが、レーザー治療には全く痛みを伴いません。通常は数分で治療が完了します。治療後には、切開した後嚢が硝子体側に遊離しますので、一時的に飛蚊症が生じますので、あらかじめ説明が必要です。

 

合併症

 ネオジム・ヤグレーザー後発白内障切開術は、有効性、安全性ともに高い治療と考えられていますが、術後合併症の可能性もあります。最も頻度が高いのは虹彩炎、眼圧上昇です。眼圧上昇予防剤の点眼を術前、術後に使用し、術後にはステロイド点眼を処方するのが一般的です。

 また、白内障手術後の比較的早期に後発白内障切開術を施行した際に、嚢胞様黄斑浮腫という視力低下の原因となる合併症を引き起こす危険性があること、またまれにではありますが、網膜剥離の発生頻度が上昇することも報告されています。したがって、後発白内障切開術後には、眼底検査をしっかり行なうことが重要です。

 白内障の手術自体は1回で完結するものですが、白内障術後の視力低下にはいろいろな原因が考えられます。視力低下の原因が後発白内障だった場合は、レーザー治療によりまた見えるようになりますので、とても喜んでもらえます。

 しかし、他の病気が原因である場合には、それぞれの病気に対する治療が必要になります。早期発見、早期治療によって治療可能な病気もありますので、白内障術後の視力低下が起こった時は、すぐに眼科を受診して、その原因を明らかにする必要があります。


加齢黄斑変性やさしい眼科通信2013年2月号第21回

 

肝心なところが見えなくなる病気

 「肝心なものは目には見えないんだよ」作家のサン=テグジュペリは「星の王子さま」の中で、私たちに大切なものは何かを教えてくれました。今回は肝心なものは目には見えない、といった メルヘンチックな話ではなく、 「見ようとするところが、見えづらくなる」加齢黄斑変性のお話をー。

 

網膜の中心にある黄斑

 目の奥には網膜と呼ばれる神経の膜があり、カメラに例えると フィルムにあたります。 網膜はフィルムと違って場所によって感度差があるのですが、 黄斑は網膜の中心部にあり、真ん中が少しへこんだ直径6ミリほどの領域で、一番感度の高い場所です。黄斑で物の形、大きさ、色などの情報の大半を識別しているといえます

 

片目からやがて両目に

 黄斑が異常に老化して起きる病気が加齢黄斑変性です。「滲出型」と「萎縮型」に分類され、滲出型は日本人に多くみられ、進行が速いタイプです。網膜の後ろにある脈絡膜から異常な新生血管が伸び、そこかの出血やしみ出た水分が黄斑部の視細胞を傷めます。その結果、見ようとする中心部分が見えづらくなり、ゆがんで見えたり、小さく見えたり、まん中が暗くなったりという症状が起きます。

 症状は片目から始まりますが、やがて両目に及ぶ人が多く、失明の原因にもなります。片目に病気が起きても両目で見ると気付かないことがあります。 時々片目を隠して問題がないか自己チェックをお勧めします。例えば片目を隠し、カレンダーの日にちを区切る縦線、横線のゆがみや、見えにくい数字がないかなどのチェックが有用です。

 

最近増加傾向です

 加齢黄斑変性は、アメリカでは成人の失明原因の第1位です。日本の第1位は緑内障ですが、食生活の欧米化、高齢者人口の増加のためか、患者数が増加してきています。2007年の推定患者数は約69万人といわれ、9年前に比べ倍増しています。なぜ起こるのかの原因はまだはっきりと分かっていません。 網膜の老化現象と考えられていますが、長年にわたって光を見ることに関係しているのではないかと言われています。また、喫煙、高血圧がこの病気を速める危険があると考えられています。女性より男性に多くみられます。

 

その診断方法は

 診断は、網膜の下にある新生血管(脈絡膜新生血管)の部位、大きさなどから判断して治療方法を決定します。眼底検査のほか、眼底造影検査という腕の静脈から色素を注射し、色素が心臓から眼球に送り出されてくる状態を、眼底カメラで写真やビデオに記録することによって、新生血管を捉えることができます。また、光干渉断層計で網膜、脈絡膜の断面像を捉えることができ、脈絡膜新生血管の部位、深さ、広がりを知ることができます。

 

新治療方法が次々と

 治療の主流はレーザー光凝固でしたが、脈絡膜新生血管をつぶす時に、同時に正常網膜にもダメージを与えてしまうために、黄斑のまん中近くに新生血管がある場合は治療ができませんでした。04年に光線力学的療法(PDT)が認可され、光線過敏物質を注射によって体内に入れて脈絡膜新生血管に集まった時を目掛けてレーザーを照射し、新生血管だけをつぶすという方法です。09年に血管新生を止める薬物が認可され、46週おきに眼球に直接注射することで、視力回復効果も望めるようになりました。1211月には2カ月ごとに注射する新薬も承認されました。しかし、重症の場合は黄斑の障害が残るため回復にも限界があります。

 

早期発見が最重要

 加齢黄斑変性はノーベル医学・生理学賞を受けた山中伸弥教授が開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)による初の臨床研究の対象に予定され、注目を浴びています。臨床研究は、他の治療法で効果がない重症の患者少数を対象に、安全性の確認から開始される予定です。

 黄斑部のダメージが軽い早期に発見することによって、重症化を予防することが重要です。50歳以降の年1回の眼底検査によって、症状が出る前に起きる目の中の変化を見つけることができます。黄斑部に老廃物がたまることによってできる「ドルーゼン」が初期変化と考えられています。この段階なら、ビタミンACEと亜鉛が入ったサプリメントを摂ることで加齢黄斑変性になりにくいという報告があります。早期発見のために、片目での自己チェックをお勧めします。


眼科の上手なかかり方<やさしい眼科通信20133月号第22回>  

 

早期発見・早期治療のために

 2年間にわたり「やさしい眼科通信」をお届けしてきましたが、今回が最終回です。目の検診の重要性、眼科の検査のあれこれに始まり、眼科でよく診る病気について書いてきました。眼科に限らず、病気の対処に大切なことは「早期発見・早期治療」です。最終回は、眼科でどのようにすればスムーズな診察が受けられるのかについてお話します。

 

まずは問診票の記入を

多くの眼科では、初めての患者さんに「問診票」の記入をお願いすると思います。あらかじめ教えてもらえると、症状のおおよその見当や事前の検査が必要かどうかなどが分かり、準備がスムーズにできるので、余計な待ち時間を減らすことにつながります。分かる範囲でかまいませんので必ず記入をお願いします。

 目は左右2つあるので、どちらの目に症状があるのかを教えてください。この時に正しい情報が得られないと正しい診断ができるまでに時間がかかったり、本当は不必要な検査をすることになったりします。例えば「目がかすむ」という理由で受診された時は、先に視力検査・屈折検査・眼圧検査をした後に診察となります。「目やに」が多いという場合は、感染性の結膜炎の可能性があるため、視力検査は後日になります。

 

症状をメモして持参を

いつごろから症状があり、どう変ってきたのかを教えてください。いつからの症状かによって、より正確に診断を絞ることができます。治療に反応しやすいものかどうかの判断にもなります。家でメモを作って持参されると良いと思います。

 また、いろいろな症状がある場合、自分にとって最も重要と思う症状から順番に教えてください。例えば、過去に目の手術を受けている場合など、手術の影響が出てきている可能性もあるので正直に教えてください。他の眼科で治療を受けている場合も同様です。緑内障で眼圧を下げる目薬を使用して眼圧が正常なのと、何も治療せずに眼圧が正常なのでは、その意味合いが違ってきます。その場合、使っている目薬の名前が分かると助かります。

 

眼鏡の度数は合っている?

眼鏡が合っていないために疲れ目の症状が出ている場合や、遠近両用眼鏡を掛けたほうがよく見える場合など、眼鏡が不適合なために症状が出ていることもあります。度数と、その眼鏡を掛けた視力検査が必要です。コンタクトレンズは、使用方法によっては黒目に傷が付くこともあり、傷の有無なども検査します。

 

眼科以外の病気について

糖尿病や高血圧があると眼底出血を引き起こすことがありますが、かなり進行しないと自覚症状は出てきません。逆に見えにくいなどの自覚症状が出てきてからでは手遅れになってしまうこともあります。一見、目と関係ないと思われる病気でも、治療中の病気(もしくは指摘されたことのある病気)があれば教えてください。

 

検査は怖くありません

視力検査は重要な検査の一つですが、本人の自覚検査です。見ようと目を細めることなく、リラックスして答えてください。はっきり見えなくても、輪の開いている方向が何となくでも分かれば答えてください。他にも検査室には、いろいろな器械があり、検査を受けてもらいますが、痛きないので、安心して受けてください。

 やさしい眼科通信では、1回目から4回目までは眼科に馴染みをもってもらう目的で眼科診療についての説明をしました。5回目からは、赤ちゃんが最初にかかりやすい病気から始まり、年齢を重ねるにしたがって増える代表的な病気について順番に書いてきました。

 この通信は、目に何か気になることがあった時には、皆さんに眼科に気楽にかかってもらいたいという気持ちで書かせていただきました。長い間、私のつたない文にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

 

1)目の検診の重要性:234月号

2)視力検査(屈折検査):235月号

3)眼科検査器械:236月号

4)診察室の検査 スリット・眼底検査散瞳:237月号

5)赤ちゃんの目の病気:238月号

6)斜視:239月号

7)3歳児検診:2310月号

8)弱視:2311月号

9)眼科学校検診:241月号

10)近視・仮性近視:242月号

11)コンタクトレンズ:243月号

12)アレルギー性結膜炎:244月号

13)ウイルス性結膜炎:245月号

14)飛蚊症:246月号

15)ドライアイ:247月号

16)老眼:248月号

17)緑内障 :249月号

18)糖尿病網膜症:2410月号

19)白内障:2411月号

20)後発白内障:251月号

21)加齢黄斑変性症:252月号

22)眼科の上手なかかり方:253月号