涙目

 

先天鼻涙管閉塞

 

ドライアイ


涙目

涙目2004.10.1発行 優しい眼科クリニック第11号から>

 

涙目

「涙目」についてのお話です。

 

いなかっぺ大将

涙目のキャラクターで思い出すのは、「いなかっぺ大将」の主人公「風 大左エ門」ですよねえ。と言っても、同意は得られそうにありませんが・・・。大ちゃんは、つらい目、悲しい目に合うと大きい涙を目からぶら下げて「どぼちて、どぼちて(どうして、どうして)」と言ってました。「いなかっぺ大将」は、川崎のぼる氏の作品ですが、川崎氏には「巨人の星」という大出世作があります。主人公「星 飛雄馬」は、気合が入る場面では必ず瞳の中が燃えていました。やはり目は口ほどに物を言うためか、漫画では目を使っての表現が重要だと思います。

閑話休題、涙目のお話を・・・。

 

涙って

涙目のお話の前に、涙について説明させてください。涙は上まぶたの外側にある涙腺(るいせん)という場所で作られます。涙といいますと、大ちゃんのように悲しい時に出る涙をすぐに思い浮かべますが、目にゴミが入った時やタマネギをきざんだ時にもたくさん出ますし、アクビをしても出ますよね。それ以外に重要な涙は、意外にも出ていることを意識させない、気がつかないうちに出ている涙なのです。この気がつかないうちに出ている涙は、1日分溜めたとしても0.61ml とのことですから、1年分溜めたとしても220365ml です。コーラの細い缶から太い缶くらいにしか溜まらないことになります。気がつかないうちに出ている涙を基礎分泌といいます。

 

涙の分泌

涙の分泌を刺激する神経は、角膜の知覚を司る三叉神経と、自律神経である副交感神経と交感神経の3種です。目にゴミが入った時やタマネギをきざんだ時などの反射性分泌は三叉神経、悲しい時などの感情的な涙の分泌は副交感神経、基礎分泌には交感神経が作用しています。

 

涙の通り道

分泌された涙は目の表面を濡らした後、目頭の上下にある小さな穴(涙点)に吸い込まれ、細い管(涙小管)を通って涙嚢(るいのう)と呼ばれる涙のふくろに溜まり、さらに鼻涙管を通って、鼻の奥に抜けていきます。これを涙の道、涙道といいます。

 

涙目

いよいよ涙目のお話に入ります。涙があふれるという訴えを流涙症(りゅうるいしょう)と言いますが、涙がたくさん作られすぎているか、涙の通り道に異常があり、うまく流れていないかの判断をします。涙の分泌が増加する原因としまして、目の表面の異物、逆まつ毛、角膜・結膜の感染症・アレルギー反応、疲れ目、外気、感情などの他、ドライアイが原因となる場合もあります。次に、涙の通り道に異常のある場合としまして、まぶたや涙点の位置異常、まばたきの異常、涙嚢・涙小管の感染症、外傷によるものもありますが、多くの場合は鼻涙管閉塞もしくは鼻涙管狭窄か、涙点の吸引力の減弱が原因となっています。

 

涙目の検査

細隙灯顕微鏡検査(眼科で必ずする、アゴとおでこをつけて下さい、ってヤツです)で涙の分泌が増加する原因がないことが確認されたら、次には涙の通り道の検査にうつります。この検査は眼科では「るいせん」と呼ばれています。この「るいせん」は、涙腺ではなく、涙洗のことで涙嚢洗浄の略なのです。検査のために行う涙洗は正式には涙管通水検査といいます。涙点から細い管を入れて涙道に食塩水を通し、鼻からのどに水が通過するかを調べるものです。水が通過せず逆流する場合は鼻涙管閉塞と診断できます。この鼻涙管閉塞が、一般的に「るいせんがつまっている」と誤解されているようです。おそらく、「るいせん」という検査で通過しないことから、誤解されたのだと思います。

 

鼻涙管閉塞の治療

根治法としては、人工的に排出路を作る手術(涙嚢鼻腔吻合術)があります。涙嚢の横の骨を削って穴を開け、涙嚢と鼻をつなげるというものです。これは、かなり大掛かりな手術ですし、当クリニックでは行っていません。ご希望の方には病院を紹介させていただきます。次善の策として、涙管シリコンチューブ留置術があります。これは、涙点から鼻へシリコンチューブを通して閉塞部を拡げ、3ヵ月くらい留置しておくことによって、再閉塞を防ぐという手術です。涙嚢鼻腔吻合術のように皮膚を切開することもなく、入院せず外来でできるという点で有利ですが、麻酔をしていてもチューブを通す時に痛みがあること、再閉塞がありうることが欠点です。

検査までは、まったく痛くありませんので、ご心配なく相談してください。


先天性鼻涙管閉塞症

先天性鼻涙管閉塞症<やさしい眼科通信20118月号第5回赤ちゃんの目の病気から>

 

長引く目やにには要注意

 先月号まで、眼科の検査についてお話させていただきましたので、これからは目の病気について説明します。目の病気は色々ありますので、赤ちゃんから高齢の方まで、眼科には幅広い年齢層の患者さんが受診に訪れます。そこで、まず赤ちゃんによくみられる病気についてのお話を。

 

赤ちゃんの目やに

 赤ちゃんの目で、最初に気になることが多いのは目やにだと思います。目やにの多くは、一時的なもので心配のないことが多いのですが、片目だけ目やにが多く、またなかなか治らない場合は、先天性鼻涙管閉塞症による新生児涙嚢炎が疑われます。

 

涙の通り道について

 先天性鼻涙管閉塞症の説明の前に、涙の通り道についてお話させていただきます。

 涙は上まぶたの外側にある涙腺(るいせん)という場所で作られます。分泌された涙は目の表面を濡らした後、目頭の上下にある小さな穴(涙点)に吸い込まれ、細い管(涙小管)を通って涙嚢(るいのう)と呼ばれる涙のふくろにたまり、さらに鼻涙管を通って、鼻の奥に抜けていきます。これを涙の道、涙道といいます。

 

先天性鼻涙管閉塞症

 赤ちゃんの鼻涙管の出口に生まれつき膜が張っていることが、先天性鼻涙管閉塞症の原因です。膜のために、涙が鼻の奥に抜けないので、涙目になります。また、涙の流れも滞りますので、そこにばい菌が繁殖し、目やにが出るようになります。

 まずはお母さんに、涙嚢部マッサージとばい菌止めの目薬を指導します。軽く目頭の下の涙嚢部をマッサージすることによって、そこにたまっている涙と目やにを押し出してから、ばい菌止めの目薬をさします。生後7ヵ月くらいまでは、この治療で様子を見るようにしています。それでも症状が治らない場合は、鼻涙管開放術といってブジーと呼ばれる細い棒を涙道に通して、膜を破る治療を行うことになります。

 マッサージと点眼で自然に治る場合があること、7ヵ月以上になってしまうと、赤ちゃんを抑えて処置することが難しいこと、7ヵ月くらいまでは、感染に対する抵抗力が弱いので早期の手術はお勧めできないことが7ヵ月まで待つ理由です。

 しかし、赤ちゃんによって体の大きさが異なりますので、体格のよい赤ちゃんの場合は、抑えることが出来るうちにと考えて、生後6ヵ月で手術を行う場合もあります。これは、抑えられない場合は全身麻酔で行わなければならないことになってしまうので、それであれば、早めにと考えて行う場合があるということになります。

 

下眼瞼睫毛内反症

 赤ちゃんの下まぶたのまつ毛は、黒目に触っていることがよくあります。赤ちゃんの顔はぽっちゃりしていて、まぶたが膨らんでいることが多いので、まつ毛が黒目に触りやすいのです。幸いに赤ちゃんのまつ毛は、とても柔らかいので黒目に触っていても、特に問題を起こさないことが多いのです。また成長とともに、まつ毛は次第に外をむいて来て、黒目に触れなくなってきます。多くは45歳になって顔が引き締まってくるにつれて、自然に治ってくることが多いのです。まつ毛が黒目に当たることによって傷がつくと、目やにがでたり、涙目になったり、白目が赤くなったり、外に出るとまぶしがったりするような症状を起こします。目薬を使っても症状を繰り返したり、45歳を過ぎても全く治らない場合は、全身麻酔での手術を相談することになります。

 赤ちゃんの目やには、結膜炎が原因のことが最も多いのですが、先天性鼻涙管閉塞症や下眼瞼内反症が原因で、なかなか自然には治らないこともあります。ただの目やにと考えずに、長引いたり繰り返したりする時は、眼科に連れて来てください。


ドライアイ

ドライな人増えてます2015年グラフ旭川5月号から>

 

 ドライアイ患者は、およそ800万人と言われています。初期症状はとてもあいまいで、何となく目が疲れやすいという感じで、自分では気づきにくいものです。気になる方は、ドライアイの検査をお勧めします。

 

無意識に出る涙は大切
 涙は上まぶたの外側にある涙腺(るいせん)で作られます。涙というと、悲しい時に出る涙を思い浮かべますが、 目にゴミが入った時やタマネギをきざんだ時にもたくさん出ますし、 アクビをしても出ます。それ以外に重要な涙は、意外にも出ていることを意識させずに出ている涙なのです。この涙は、1日分溜めたとしても0.61ml ですから、1年分でも220365ml 。 コーラの細い缶から太い缶くらいにしか溜まらないことになります。この涙を基礎分泌といいます。

 

関係する3つの神経

 涙の分泌を刺激する神経は、角膜の知覚を司る三叉神経、 自律神経である副交感神経と交感神経の3種です。目にゴミが入った時やタマネギをきざんだ時などの反射性分泌は三叉神経、 悲しい時などの感情的な涙の分泌は副交感神経、 基礎分泌には交感神経が作用しています。

 

涙の三層構造

 目の表面にある涙の大部分は涙腺から分泌される水分ですが、 実はそれだけではありません。水分の蒸発を防ぐ油分や、 水分を保持する働きのあるムチンというネバネバした物質が層となり表面を覆っています。この水分が減ったり、油分の減少で水分が蒸発しやすくなったり、 ムチンが少ないために水分が保持できなくなるなど3つの成分のバランスが崩れると、ドライアイの症状が出ると考えられています。

 

多彩な症状

 ドライアイは涙の量の減少や涙の質の変化で、目の表面の角膜や結膜に 障害が起きた状態のことです。目の表面の乾きによる症状は多彩で、 疲れる 、重い 、目がショボショボ・ゴロゴロする 、充血する、 痒い、 痛い、視力が下がった、 まぶしい、 目やにがでるなど、他の病気でも見られる症状が目白押しです。そこで視力検査など眼科一般検査をひと通り行い、ドライアイが疑われた場合には涙の検査になります。

 

微細な傷は染色で

 細隙灯顕微鏡検査で涙不足で目の表面に傷がついていないかを調べます。もちろん、そのまま顕微鏡で観察することもできますが、 微細な傷は色素で染色することによって、わかることがあります。フルオレセインという色素をつけて、コバルトブルーフィルターを通した 光で照らすと、傷ついた部分が色素に染まって見えます。また、この時に少し瞬きを我慢してもらい、 涙の膜の安定性を調べる検査も行います。次に涙の量を測るシルマーテストと呼ばれている検査を行います。 細長い濾紙を下まぶたに挟んで、5分間でどれくらい濡れるかで涙の分泌量を測定します。5分後に5ミリメートル以下だとドライアイと診断されます。

 

治療方法は2つ

1.点眼薬で目を潤す。

不足している涙の替わりに、人工涙液を点眼して直接目の表面を潤すのが、ドライアイの基本的な治療法です。人工涙液の点眼液は、頻繁に点眼していただきます。保水効果のあるヒアルロン酸の点眼薬を処方することもあります。水分とムチンの分泌を促す「ジクアホソルナトリウム」という点眼薬もドライアイに有効です。また、点眼薬ではありませんが、朝起きた時の目の表面の状態を良好に保つために、寝る前につけてもらう眼軟膏を処方することもあります。

 

2.涙点プラグ

少ない涙を有効に使う目的で、涙点プラグを入れる方法もあります。 これは涙点を塞ぐことで、少ない涙を目の表面に 長く留まるようにする方法です。 顕微鏡を使って、目頭の涙点に小さなプラグを差し込むというものですが、 痛みもなく短時間でできる処置です。コラーゲンを使用した液状の涙点プラグも使えるようになりました。

 

意識してまばたきを

 日常生活の工夫で 症状が楽になることもあり、その一つがまばたきです。 まばたきをするたびに目の表面に涙が送り込まれます。 普段は1分間に20~30回のまばたきを繰り返していますが、 コンピュータ画面を凝視している時や、集中して小さな文字の書類を 見ているときには、普段の4分の1にまで低下していると言われています。仕事中などは、意識してまばたきの回数を増やすことも 目の表面のリフレッシュになると思います。また、部屋の空気は乾燥 しがちですので、加湿を心がけ、温かいタオルで目を温めるのも 良い方法と考えられます。

 ドライアイかな?と思う方は、ぜひお近くの眼科を受診してください。